2013 Fiscal Year Research-status Report
サービス付き高齢者向け住宅の都道府県等による独自登録基準の実態と課題
Project/Area Number |
25512006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
三浦 研 大阪市立大学, 生活科学研究科, 教授 (70311743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 由美 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特任講師 (70445047)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サービス付き高齢者向け住宅 / 独自基準 / 都道府県 / 政令指定都市 / 高齢者居住安定化確保計画 |
Research Abstract |
本研究では、都道府県・政令指定都市・中核市109の自治体の独自基準についてホームページの記載に関する調査(2013.10時点)と、都道府県の担当者が、現状のサービス付き高齢者向け住宅に関する問題点をどのように把握しているのか、電話によるインタビュー調査(2013.12)を実施した。 ホームページの記載に関する調査からは、109件中85件と、80%の自治体で独自基準が定められていること、地域的には近畿地方を中心とした西日本で独自基準の整備が進む実態が把握されたほか、独自基準の詳細を分析し、「居室面積の緩和要件:71%」「台所:55%」「浴室:54%」「収納設備:53%」「パイプスペースの扱い:42%」「共用利用部分39%」「壁芯算定:24%」「居室と居間:20%」という順で独自基準が整備されている実態が分かった。 特に「居室面積の緩和要件(専用部分の面積を18㎡まで緩和できる場合)」の独自基準については、国の基準を踏襲して規定する自治体が64(85.3%)と大半を占めた一方で、地域性に応じて面積緩和した自治体が11みられるなど、地価の高い大都市周辺で独自基準が見られた。 一方、こうした独自基準に対する行政自身の課題認識について、47の都道府県の担当者に対する電話インタビューを実施した。その結果、明確に「高齢者居住安定化確保計画に基づき基準を策定した」という回答が得られたのは5都道府県に過ぎず、必ずしも法的な裏付けが十分でない状況で、都道府県が独自基準を公表している実態が把握できたほか、改善点の指摘についても1/3の都道府県からの指摘に過ぎず、必ずしも独自基準に対する問題意識は高いとは言えない状況であった。サービス付き高齢者向け住宅が出来たばかりの制度であり、現状では、入居者の介護度の進行や、サービス付き高齢者向け住宅の廃業・倒産などの問題が顕在化していないことが要因の一つだと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定していた5つの実施計画の内容については、④の見学による事例収集は十分に進まなかったが、その他は概ね計画通りに実施できた。特に自治体の独自基準の策定状況、自治体に対するインタビュー調査については予定通り実施できた。 調査方法は、当初は郵送によるアンケートを予定していたが、プレ調査を実施したN県の担当者から、日頃、国土交通省の出先機関からの電子メールアンケートに慣れているため、郵送アンケートよりも電子メールによるアンケートの方が回答しやすい、というコメントをいただき、何度も電子メールアンケートの内容を見直した。しかし、独自の基準について、統一したアンケート項目をつくると、回答数が増加し、プレ調査を実施したN県の担当者から、負担が多すぎて回収率が危惧される、という指摘を受け、電話によるアンケート調査に切り替えたことから、調査方法の調整に時間を要した。 一方、内容的な達成度は、若干の課題が残った。行政に電話によるインタビュー調査を実施したが、実施先をサービス付き高齢者向け住宅の整備担当者としたため、行政内の縦割り組織の弊害から、整備担当者が福祉部門の運営担当者と情報交換できておらず、運営の課題を把握しておらず、問題点を十分に引き出せなかった。インタビュー調査を実施する対象を、サービス付き高齢者向け住宅の整備担当者ではなく、福祉部門の運営担当者とした方が適切な実態把握に結びついた可能性があり、来年度以降の課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、基準がハードに及ぼす課題について焦点を当てるため、設計者に対する調査を中心に進めることとする。まず、年度の前半については、①特徴的な独自基準を導入した都道府県、政令指定都市を対象に、インタビュー調査を実施したい。特徴的な独自基準を導入した自治体は、一定の議論を踏まえて整備しているため、そこから得られた回答については、他の自治体よりも深い問題意識を有すると考えられるからである。 インタビュー調査により、問題点・実態の把握につとめたうえで、②該当の都道府県の実例を視察しる。その結果を踏まえて、③年度後半には設計者を対象としたアンケート調査を実施し、サービス付き高齢者向け住宅の空間構成、ハードの問題点について把握を行う手順としたい。 なお、調査を実施するなかで、建物内の基準だけでなく、地域を含めて入居後、関係性の構築や別居家族との関係性の継続が大きな問題点であることに気がついた。当初の予定からは広がりを見せるが、地域との関係性構築や家族との関係性維持の支援につながる方策については、サービス付き高齢者向け住宅のハード、運営ソフトに付随する課題として工学的なアプローチの可能性を検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を計画した時点では、都道府県・政令指定都市・中核市へのアンケート調査の実施を予定していた。しかし、調査票の作成段階でN県の担当者に調査票案を見てもらったところ、郵送のアンケートでは、部署をたらい回しになって回答しない。国交省からメールアンケートが届き、それに対して回答することには慣れているので、メールアンケートにしてはどうか、というアドバイスをいただき、郵送によるアンケートを中止し、最終的に電話によるインタビュー調査という形式を取った。このため、アンケートの印刷、郵送、回収にかかる経費がかからず、その分の予算が余った。 今後に予定している設計者を対象としたアンケート調査に充当し、サービス付き高齢者向け住宅の空間構成、ハードの問題点について把握したい。
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Research Products
(5 results)