2014 Fiscal Year Research-status Report
サービス付き高齢者向け住宅の都道府県等による独自登録基準の実態と課題
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25512006
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
三浦 研 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (70311743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 由美 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (70445047)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サービス付き高齢者向け住宅 / 独自基準 / 都道府県 / 政令指定都市 / 中核市 / 専有面積 / 共有面積 |
Outline of Annual Research Achievements |
都道府県政令市等の面積緩和要件の影響を調べるため、本年度は国のサービス付き高齢者向け住宅情報提供システムに記載された住宅を悉皆調査(2014年9月末現在、登録住戸15万7千519戸)し、以下の実態を把握した。 自治体による、面積緩和要件の違いとサービス付き高齢者向け住宅の面積、設備の関連を調べた結果、「独自に面積緩和用件を定めた自治体」や「具体的な面積基準を定めない自治体」では、広い住戸面積(専有部のみで25㎡以上)が20.0%、11.2%と少なく、また、狭い住戸面積(共有部面積/戸を加えても25㎡未満)が58.9%、61.0%と多いこと、一方「専有部面積+共有部面積≧25㎡」と定めた自治体では「専有部のみで25㎡以上」の住戸が27.0%と多く、反対に「共有部面積/戸を加えても25㎡未満の住戸」が27.8%と少なかった。また、面積緩和要件の違いと住戸内設備の関係を分析した結果、「独自に面積緩和用件を定めた自治体」や「具体的な面積基準を定めない自治体」では、風呂、台所の設置住戸が16.0%、10.8%と少なく、逆に風呂、台所のいずれも設置しない住戸が64.0%、58.0%と多かった。一方、「専有部面積+共有部面積≧25㎡」と定めた自治体では、風呂、台所を完備する住戸が、26.2%と多く、風呂、台所のいずれも設置しない住戸が52.1%にとどまる実態を把握した。 また、住戸内設備の有無ごとの専有部面積・共用部面積/戸の中央値を調べた結果、風呂・台所を設置しない住戸は、専有部面積・共用部面積の合計で4.4㎡/戸の面積が減り、家賃・共益費の合計が2.4万円減少する実態から、サービス付き高齢者向け住宅の面積緩和要件を緩く設定した自治体や具体的な数値を盛り込まなかった自治体では、住戸面積が狭く、かつ住戸内設備が充実していないが、低コストの住戸を増えている実態を把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、今年度設計者にアンケートを行う予定であったが、最初、行政へのインタビュー調査を実施した際に、兵庫県において、独自基準の影響を国のサービス付き高齢者向け住宅情報提供システムに記載された住宅情報を分析する方法があるのではないかと指摘された。確かに、同情報システムに住戸ごとの面積情報が記載されているため、その分析を行うことで、都道府県の独自基準の影響を客観的に実証できるが、同情報システムには、サービス付き高齢者向け住宅の情報が、住戸タイプごとの情報に分かれて記載されているため、ひとつのサービス付き高齢者向け住宅の入力に限ってもその方法は煩雑になる。そこで、エクセルでマクロシートを作成し、データ入力を合理的に行うためのシートを作成した。データ入力の手法を解決した後は、15万戸の情報の入力は膨大な作業になるため、今年度のアンケート調査に投じる予定のマンパワーをより効果的なデータ入力に切り替えたが、それでも約5ヶ月がかりでデータ入力を終えることができた。そのため、悉皆調査に基づく、信頼性の高い実証データの分析に取り組めた。これまで、国土交通省による都道府県ごとの単純集計や、各種調査機関のアンケート調査は取り組まれているが、15万戸の悉皆調査は過去になく、都道府県政令市等の面積緩和要件の影響の分析は今年度、大きく進展した。15万を超えるN値があるため、殆どの項目で統計的な有意差が出るなど、実証的な分析を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は15万戸の悉皆調査による、実証データの分析によって、自治体による面積緩和要件の違いとサービス付き高齢者向け住宅の面積、設備の関連を広範囲に明らかにすることができたが、2014年度は専有部の分析を主に実施したため、共用部については十分に分析できなかった。たとえば、国のサービス付き高齢者向け住宅情報提供システムに記載された、介護保険事業所のサービス内容や、共用空間の種類や面積については、転記データに含めなかったため、十分な分析を行えていない。このため、コンパクトな共用部の計画はどのような特徴や実態があるのか、という点については実証的な分析ができなかった。さらに、建物の構造や外観など、サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムでは把握できない実態についても、分析を行えていない。今後の課題としては、2014年度に入力した15万戸のデータ資産を活かしながら、未分析の項目(インターネット等で把握できる他の情報等)を再び15万戸分データ入力することで、より精緻な因果関係の分析を行うことが重要である。ただし、今年度の調査は、すでにあるデータを改変することで可能になるため、丁寧に時間をかけることで作業の進捗が期待できる。2014年度の成果を活かす方向で研究を推進するため、全国の悉皆調査にくわえて、エリアを絞り込んだ実証研究の可能性も含めて調査実施範囲を検討したい。
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Causes of Carryover |
2014年度、分担研究者が大阪市立大学から奈良県立大学に移動し、それまで学内で実施できた打ち合わせが1時間以上の移動を伴うようになったこと、また、分担研究者の赴任初年度の業務の負担から、十分に連携して研究を進めることができず、行政へのインタビュー調査に遅れが生じたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度は研究の最終年度である。残りの費用は、主に2014年度のデータの詳細分析の謝金と、研究結果の分析を行政への提示と、提示から得られる行政側の考え方の収集を行い、独自基準のあり方について分析と考察を進める。
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