2014 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な不動産開発のための簡易アセスメント制度とその手法に関する研究
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25512007
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
原科 幸彦 千葉商科大学, 政策情報学部, 教授 (20092570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 卓也 千葉商科大学, 政策情報学部, 講師 (90599391)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 簡易アセスメント / 持続可能性 / アジェンダ21 / 参加 / 情報公開 / public concern |
Outline of Annual Research Achievements |
不動産開発における簡易アセスメント導入に向け、その制度と手法について検討するため、現在の日本国内におけるアセスメントの現状を、米国の制度と国際比較するとともに、アセスが必要と思われるのに、アセスが行われなかった最近の国内事例の問題点を具体的に分析した。 まず、制度的枠組みについて、国内では数少ない簡易アセスメントの仕組みである、川崎市の条例アセス制度と、米国ボストン市のアセス制度の実績をもとに比較検討した。その結果、以下が得られた。まず、川崎市は、大きな影響が予想されても詳細アセスには乗り換えない、いわゆる「簡易なアセス」の制度化により、市街地建築物に関して一定の成果は上げている。だが、「簡易アセス」にもとづくスクリーニングが行われないため、人々の懸念(public concerns)に応えられない恐れが大きい。また、川崎では情報公開のタイミングが遅いため、十分な参加ができにくいという問題も明らかになった。 次に、人々の懸念(public concerns)が特に大きいのにも関わらず、アセスが行われなかった最近の事例として、新国立競技場計画を取り上げ、参加と情報公開の在り方について詳細な分析を行った。2020年東京五輪の会場となる国立競技場は建替えが決まったが、計画が決定した後に、都による後付的けなアセスが行われている。競技場近隣住民に対する社会調査を行った結果、情報公開のタイミングが遅く、事業者と地域住民との間の情報の非対称性が著しいことなどが明らかになった。 これは、新国立競技場のような大きな建築物でもアセス対象にならないという現行制度の欠陥である。一部の巨大事業だけを想定した現行アセスでは時間も費用もかかることになるが、規模が巨大でなくとも対象とできるよう、簡易アセスの導入が求められる。これにより、十分な情報公開のもとでの参加プロセスが実現する可能性が生まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、不動産開発における簡易アセスメントの我が国への導入のために制度と手法を検討することを目的としている。そこで、まず制度的な枠組みの分析を、川崎市と米国ボストンを対象として行なったが、情報公開と参加の点で、日本の仕組みはまだ多くの問題が残されていることが明らかになった。この成果は環境アセスメント学会や、国際影響評価学会(IAIA)などでの発表も行い、国内外の専門家との意見交換を行っている。 川崎市とボストン市の制度の比較から、情報公開と参加という基本問題が提示されたことから、この視点から最近の具体事例の分析が行えた。新国立競技場計画の問題を契機に「参加と合意形成研究会」を立ち上げ、そのメンバーの協力により近隣住民に対する社会調査を行い、貴重なデータが得られた。その分析から、手法を検討する上で重要な情報公開の手法に関する知見を得ている。簡易アセスでは、早期の情報公開と参加が基本的な条件である。これらの知見は、最終年度に簡易アセスの制度と手法の整理を行う上で基礎となる。 以上より、研究活動はおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度であり、これまでの研究で不足する情報を追加し、不動産開発における簡易アセス制度とその手法についての知見をまとめ、提言を行う。 そのため、これまでの成果を学術論文としてとりまとめ、学術誌に投稿する。そのためにまず、これまでの成果を2015年4月にフィレンツェで開催される国際影響評価学会(IAIA)の場でも情報発信し、国際的な情報交流と意見交換を行う。 さらに、これらの成果を踏まえ、日本不動産学会の秋季全国大会でワークショップを開催し、都市・地域の持続可能性アセスの観点から簡易アセスを導入することなどの議論を行い、提言作成への示唆を得る。合わせて、他の学会でも簡易アセス制度の導入に向け情報発信をしてゆく。2016年5月には、アセス分野の世界の基幹学会である、IAIAの世界大会が初めて日本で開催されるが、その場でも本研究の成果を発表し議論を展開してゆく。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに使用したが、物品費が若干予定よりも節約できたため、656円が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
金額が656円なので、来年度の物品費の一部に充当する予定。
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Research Products
(8 results)