2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25514006
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
保尊 隆享 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70135771)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗重力反応 / 細胞膜 / 植物 / メカノレセプター / 膜ラフト |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の抗重力反応における膜ラフトの動態について、シロイヌナズナより細胞が大きく観察が容易なアズキ上胚軸を用いて詳細な解析を行った。抗体染色によって膜ラフト分布に対する過重力の影響を解析した結果、膜ラフトが成長部域の細胞に多く分布し、その形成が過重力によって促進されることが確認できた。シロイヌナズナ胚軸を用いて得られた昨年度の結果とあわせて、膜ラフトが重力環境に応じてその動態を変化させ、抗重力反応における重力シグナルの変換・伝達に深く関わることが明らかになった。 細胞膜の他の主要成分であるメカノレセプター(機械刺激受容チャネル)は、抗重力反応における重力シグナルの受容を司ると考えられる。その候補遺伝子であるMCAの機能を検証するため、2つのMCA遺伝子の欠損系統の成長に対する過重力の影響をメカノレセプター阻害剤存在下で調べたところ、MCA欠損系統では過重力に対する感受性が半減していたが、ガドリニウムイオンの共存によりさらに低下することがわかった。すなわち、MCA遺伝子は抗重力反応における重力シグナルの受容において重要な役割を果たしているが、他にもメカノレセプター様のタンパク質が存在する可能性が示唆された。イネ芽ばえを用いて同様の解析を行った結果、特に根において、メカノレセプターが抗重力反応における重力シグナルの受容に広く関わっていることが示された。 一方、抗重力反応におけるMCA遺伝子の動態を明らかにするため、両MCA遺伝子のプロモーターGUS 形質転換体を作出し、MCA遺伝子の発現に対する重力刺激の影響について解析した。形質転換体の芽ばえを1 g及び300 g条件下で生育させて、GUS 染色のレベルを比較したところ、過重力環境下では濃く染色されており、MCA遺伝子の発現レベルが上昇していることがわかった。過重力環境下でのGUS染色レベルの上昇は、特にMCA2で顕著であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞膜成分の内、膜ラフトとメカノレセプターの動態や機能について、多くの新規知見が得られた。両者の機能をさらに検証し、他の細胞膜成分を含めた全体像を明らかにするため、SALK研究所の純系T-DNA挿入ラインの中から、本研究に適した新規ラインを単離し、解析する実験も開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞膜成分に関わるGFPライン及びノックアウトラインを入手あるいは単離する。得られたGFPライン及びノックアウトラインの動態や形質を1 g下及び過重力環境下で解析し、抗重力反応における各細胞膜成分の機能を解明する。また、GFPラインの動態に関するデータの比較処理、並びにそれぞれのノックアウトラインの他の成分に関わる形質の精査を行い、抗重力反応における細胞膜成分の相互作用を明らかにする。さらに、各成分のノックアウトラインのマイクロアレイ解析を行い、各成分の変異により、抗重力反応における他の細胞膜成分の代謝や機能に関わる遺伝子群の発現がどう変化するか解析し、相互作用を解明する。
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Causes of Carryover |
純系T-DNA挿入ラインの中から本研究に適した新規ラインを単離するのに時間がかかり、実際に費用が必要なその形質解析については十分な実施ができなかったため、研究費に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本実験のために単離した純系T-DNA挿入ラインの形質について、研究費を用いて詳細な解析を行う。また、細胞膜成分間の相互作用の実態を明らかにするためのマイクロアレイ解析にも使用する。
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