2015 Fiscal Year Annual Research Report
二酸化炭素吸入と微小重力環境がヒトの脳循環・頭蓋内圧に及ぼす影響の医学的検討
Project/Area Number |
25514008
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岩崎 賢一 日本大学, 医学部, 教授 (80287630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 洋二郎 日本大学, 医学部, 助教 (60434073)
鈴木 孝浩 日本大学, 医学部, 教授 (60277415)
篠島 亜里 日本大学, 医学部, 助教 (60647189)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 宇宙医学 / 衛生学 / 特殊環境 / 脳循環 / 二酸化炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、国際宇宙ステーションでは、空気中の二酸化炭素濃度が0.5%程度で地上より高めである。さらに宇宙では微小重力であるため、温度差による空気の自然対流がなく二酸化炭素濃度の高い呼気がポケット状に停滞する場合がある。そこで、宇宙で高い二酸化炭素ガスを吸い込んだ際の脳循環の影響を明らかにするため本研究を計画した。 宇宙では微小重力のために頭側方向に血液や体液が集まった状態になりやすい。その状態を模擬する実験として、頭側を10度下げた体位にする方法(ヘッドダウンティルト:HDT)を今回は用いた。そしてその状態に加え3%二酸化炭素を吸入した際の脳循環の変化を明らかにすることとした。 4プロトコールを実施した。水平に仰向けになり大気相当0.04%もしくは3%の二酸化炭素含有ガスを10分間吸入(プロトコール:①プラセボ、②CO2)、ヘッドダウンティルト姿勢で、大気相当0.04%もしくは3%の二酸化炭素含有ガスを10分間吸入(③HDT、④HDT/CO2)。その際、経頭蓋ドプラ計や血圧計を装着し波形を記録した。昨年度までの実験を継続し、平成27年度は特に④HDT/CO2を中心に、当初の予定通り4つのプロトコール完遂者が15名になるまで実施した。国際宇宙ステーション相当の0.5%二酸化炭素吸入60分も行ったが著明な変化はなかった。 脳循環調節機能は、血圧の変動が脳血流の変動に影響を及ぼすのをどれだけ抑制できているかを表すGainにて評価した。そして、この値が④HDT/CO2(模擬微小重力姿勢+3%二酸化炭素含有ガス吸入)において他のプロトコールに比べ有意に増加し、脳循環調節機能が悪化することが示唆された。これらのことから、微小重力の宇宙空間では、地上に比べて、高濃度の二酸化炭素を吸った際の脳循環調節への悪影響が大きいと考えられ、宇宙飛行士の健康のために二酸化炭素の管理が重要と思われた。
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