2014 Fiscal Year Research-status Report
慢性睡眠不足状態でのナルコレプシー類似状態の検討-携帯型脳波計を用いて
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25515005
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
碓氷 章 文京学院大学, 保健医療学部, 客員教授 (40203517)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大学生 / 睡眠日誌 / 睡眠脳波 / 睡眠潜時反復検査 / 睡眠習慣 / 睡眠不足 / ナルコレプシー |
Outline of Annual Research Achievements |
(1-1)大学生73名を対象として、HLA-DQB1タイピング、睡眠日誌記録、日本語版エプワース眠気尺度(JESS)記録を行った。年齢、性、DQB1*0602 allele数、平日・休日睡眠時間を独立変数、強い眠気(JESS≧15)を従属変数として多変量ロジスティック回帰分析を行い、休日睡眠時間が1時間長いとodds比は0.25であった。大学生の眠気は休日の長時間睡眠で軽減することが示唆された。 (1-2) 46名には携帯型脳波計(1ch EEG)による在宅睡眠記録を行い、睡眠変数を算出した。眠気の強い群で、レム潜時の短縮が認められた。 (2)大学生21名に、睡眠日誌記録、終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)、睡眠潜時反復検査(MSLT)を行った。MSLT平均睡眠潜時(MSL)≦8分かつ入眠時レム睡眠期(SOREMP)≧2回をナルコレプシー域(N域)、MSL≦8分かつSOREMP<2回を特発性過眠症域(IH域)、MSL>8分を正常域とすると。N域5名、IH域10名、正常域6名だった。平日・休日睡眠時間は3群間で差はなかったが、平日で約6時間だった。正常域と比べN域・IH域は夜間睡眠潜時が短く、睡眠効率が高かった。MSLT平均レム潜時はN域でも7.15分と長かった。必要とする睡眠時間の長い者が病的眠気を示す、複数回SOREMP出現も睡眠不足による、と考えられた。 (3)大学生23名に、PSG・MSLT、1ch EEGを同時に行った。1ch EEGとPSGとの判定一致率は0.792、kappa係数は0.666であった。1ch EEGとMSLTとは0.842、0.674であった。1ch EEGは覚醒・レム睡眠を過剰判定、深睡眠を過少判定する傾向があったが、回帰分析では夜間睡眠期間、総睡眠時間、睡眠効率、覚醒時間、睡眠潜時についてPSG値を高度に推定できた(係数>0.91、R二乗>0.89)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の平成25年度計画は、A-1睡眠習慣調査・在宅睡眠脳波記録・HLAタイピング等を90名に行う、A-2携帯型脳波計を用いた簡易PSG・MSLTの妥当性を15名の被検者で検討する、平成26年度計画は、B-1睡眠習慣調査・簡易PSG・簡易MSLT・HLAタイピング等を30名に行い、背景因子の抽出・睡眠構造の検討・SOREMPs出現様式を検討する、B-2 睡眠時間を1~2時間延長して再度簡易PSG・MSLTを行う、というものであった。 A-1については上記(1-1)(1-2)が該当する。(1-1)大学生の自覚的眠気は休日の長時間睡眠で軽減する、(1-2)眠気の強い群でレム潜時は短い、が要旨であり、平成27年日本睡眠学会で発表する。また、平成25年度に得られた結果は平成26年日本睡眠学会で発表した。 A-2については上記(3)が該当する。簡易脳波(1ch EEG)でPSG・MSLT結果を推定できるのは、夜間の睡眠期間、総睡眠時間、睡眠効率、覚醒時間、睡眠潜時のみであり、1ch EEGはPSG・MSLTの完全なる代替とはならない(平成27年日本睡眠学会で発表予定)。 A-2を受けてB-1はPSG・MSLTを用いて行った。上記(2)が該当する。必要とする睡眠時間の長い者が病的眠気を示し、複数回SOREMP出現も睡眠不足による、が要旨であり平成27年日本睡眠学会で発表する。被検者にとって睡眠時間を延長することも複数回検査を行うことも困難が多く、B-2は行えていない。 当初計画より進捗しているのは、平成25年度から行っている睡眠外来受診者についての解析である。平成26年日本睡眠学会で発表した後、解析をさらに進め、論文投稿準備段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25・26年度解析で、大学生の睡眠時間は平日短く、休日長い睡眠不足パタンであること、休日の睡眠延長で主観的眠気は軽減すること、必要とする睡眠時間が長い者が病的眠気(客観的)となることを示した。睡眠外来受診者の解析でも、ナルコレプシー1型はMSLT平均睡眠潜時(MSL)2分以下・SOREMP3回以上・平均レム潜時(MRL)3分以下であること(ROC)、2型には若年・男性・平日の睡眠時間の短さが関与する(ロジスティック回帰)ことがはっきりしてきた。大学生を対象とした研究は終了とし、平成27年度は外来受診者を対象として研究を進める(睡眠時間延長の順守、複数回検査は困難が多く、計画を変更する)。 C-1’ MSL2分以下・SOREMP3回以上・MRL3分以下のvalidation。新規にPSG・MSLTを実施した者(目標100名)を対象とする。初診時に、患者背景、習慣的睡眠時間、JESS、ナルコレプシー関連症状を調査記録する。Sleep logが2週以上記録されており、PSGで閉塞性睡眠時無呼吸・周期性四肢運動障害などが除外されている者にはHLAタイピングを行う。DQB1*0602陽性かつ情動脱力発作がある者をナルコレプシー1型として、上記MSLT基準が適切であるか検討する。 C-2’ MSLT指標による患者の群化。既にPSG・MSLTが済んでいて平成25・26年解析に用いていない患者データ(C-1’とは独立)を対象(目標800名)に、MSLTの3指標を用いて統計学的にデータの群化を行う。C-1’に似た群が出来るか検討し、それが出来るならその背景・症状・PSGの特徴をあきらかにする。同様に他の群の特徴も明らかにする。 C-1’、C-2’は異なった2解析であり、これがほぼ一致する結果となればナルコレプシー1型の輪郭が明瞭となり、診断確定・鑑別に有用な手段となり得る。
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Causes of Carryover |
直接経費を、旅費、その他(携帯型脳波解析、HLAタイピング)に使用し、残額(151,504円)が生じ、次年度使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度助成金(直接経費1,200,000円)と合わせ、旅費、その他(HLAタイピング、論文投稿校正)に用いる。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] 学生の主観的眠気は休日睡眠で軽減する2015
Author(s)
碓氷 章, 小倉史也, 酒林晃子, 藤原由佳梨, 増山里枝子, 川良徳弘, 井上雄一
Organizer
日本睡眠学会
Place of Presentation
栃木県総合文化センター・宇都宮東武ホテルグランデ(宇都宮)
Year and Date
2015-07-02 – 2015-07-03
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[Presentation] 学生はMSLTで病的結果を呈しやすい2015
Author(s)
小倉史也, 碓氷 章, 酒林晃子, 藤原由佳梨, 増山里枝子, 川良徳弘, 井上雄一
Organizer
日本睡眠学会
Place of Presentation
栃木県総合文化センター・宇都宮東武ホテルグランデ(宇都宮)
Year and Date
2015-07-02 – 2015-07-03
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[Presentation] 携帯型1ch脳波計による睡眠検査の有用性と限界2015
Author(s)
碓氷 章, 小倉史也, 酒林晃子, 藤原由佳梨, 増山里枝子, 川良徳弘, 柏木香保里, 吉田政樹, 井上雄一
Organizer
日本睡眠学会
Place of Presentation
栃木県総合文化センター・宇都宮東武ホテルグランデ(宇都宮)
Year and Date
2015-07-02 – 2015-07-03
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[Presentation] 大学生は慢性的な睡眠不足状態にある2014
Author(s)
碓氷 章, 小倉史也, 酒林晃子, 下川絢子, 増山里枝子, 川良德弘, 井上雄一
Organizer
日本睡眠学会
Place of Presentation
あわぎんホール・ホテルクレメント徳島(徳島)
Year and Date
2014-07-03 – 2014-07-04
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