2013 Fiscal Year Research-status Report
原発と村落社会の法社会学的研究-下北半島を中心としてー
Project/Area Number |
25516011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporo University |
Principal Investigator |
林 研三 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (60218568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩谷 弘康 福島大学, 行政政策学類, 教授 (50250965)
岩崎 由美子 福島大学, 行政政策学類, 教授 (80302313)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 漁業 / 原発 / 漁協 / 自然環境 |
Research Abstract |
本年度は9月に東通原発立地である青森券東通村白糠で以下の点についての聞き取り調査を行った。(1)白糠地区の自治会組織と同地区での民俗慣行、(2)白糠漁協の現況と東通原発建設をめぐる紛争の発生時の様子。(1)については白糠自治会長と自治会書記(事務局)からの聞き取り調査をおこない、自治会の運営の実態把握につとめた。(2)については、当時の漁協職員である現参事から、漁協内での対立状況についての聞き取り調査を行い、現在の水揚げ高や組合員数、漁業形態についての資料収集も行った。白糠漁協は隣接する小田野沢漁協とともに一つの共同漁業権の免許を受けており、その実態について調査した。当地区での東通原発建設による漁業形態への影響の一つは、サケ小型定置網の2ヶ統減少であるという。 この調査時の宿泊地であるむつ市において、福島県内の様子を含めた調査結果についての検討会を行い、今後の予定を話し合った。そのなかで、当初予定していた沖縄電力での調査や大間原発についての調査よりも、山口県上関原発と祝島の調査、及びそれと東通村白糠との比較の必要性が指摘された。 3月に山口県上関原発に反対している祝島住民や「上関の自然を守る会」代表からの聞き取り調査を行った。それによると3.11後に中国電力が申請していた上関原発予定地での公有水面埋め立て免許延長が認められないかのような知事発言があったが、その後その延長の可否判断が延期されそうだという(4月5日の中国新聞によると、知事が延期すると発言したようだ)。「上関の自然を守る会」では内外のボランティアの参加もあり、いくつかの調査を行うだけでなく、魚の産直販売なども手がけ、原発に依存しない地域社会の形成を目指しているとのことであった。我々としては来年度(平成26年度)以降もこの上関や祝島での調査を続行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた東通村役場での「聞き取り調査」が中断している。その理由の一つは研究代表の体調不良であったが、最も大きな理由は、本研究課題が当初予想した以上に微妙な問題を含んでおり、役場担当者の今回の「聞き取り調査」への戸惑いがあったことである。しかし、他方で、地元の白糠地区での自治会や各漁協での「聞き取り調査」は比較的順調であった。 山口県上関町や祝島での「聞き取り調査」は、当初は予定していなかったが、研究分担者や研究協力者の助力もあって順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の東通村での調査では、村役場での調査は一時中断し、地元の白糠地区での調査に限定することになる。特に白糠漁協での当時の意見対立から意見集約までの過程についての「聞き取り調査」を中心にしたい。 村役場での「聞き取り調査」が不可能であっても、白糠地区やその隣接地区(老部地区)での「聞き取り調査」が可能であるので、本研究の推進にはさほど影響はないと考えている。今後は研究代表者による、漁協参事からの聞き取り調査だけではなく、白糠地区や隣接する老部地区の漁師のライフストーリーを聞くなかで、漁業や当該地区への東通原発の影響を調査していく。 他方で、山口県上関町や祝島での調査は今後も継続する。ここの調査については、主として研究分担者と研究協力者に任せることになるが、原発反対派だけでなく、賛成派からの聞き取り調査も行いたい。 なお、大間原発に関しては、函館市の提訴(本年4月)があったので、今後の推移をみながら調査計画をたてていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者が体調不良のため、3月に予定していた山口県上関町の調査に参加できず(研究分担者と研究協力者のみで実施)、また同じ理由で当該年度2回目の青森県東通村調査も実施できなかったためである。 研究代表者、研究分担者、研究協力者による調査費の増加。特に新たに追加した調査対象である山口県上関原発に関しての調査費やそれに関連する図書費にあてる。
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Research Products
(1 results)