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2014 Fiscal Year Research-status Report

上場企業の震災による損失開示行動とその評価に関する研究

Research Project

Project/Area Number 25516012
Research InstitutionTokyo Keizai University

Principal Investigator

吉田 靖  東京経済大学, 経営学部, 教授 (10383192)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2016-03-31
Keywords震災 / イベントスタディー / ディスクロージャー / リスクマネジメント / ファイナンス / 株式市場 / 情報の非対称性 / 銀行株式
Outline of Annual Research Achievements

平成26年度においては、上場企業による被害の開示行動を、その内容と開示日付時間帯により区分することを進展させ、震災後16週目である7月1日までの期間において分析を実施した。その結果、期間全体で6,785件の開示があり、そのうち、被害なしという情報も含めて何らかの開示を行ったものが震災翌週に2,154件存在することが確認された。また、開示内容も4月下旬より5月上旬の期間で金額を含んだ開示が集中しており、企業の開示内容が変化していく様子が明らかになった。
さらに、これまで対象外としていた銀行を対象とする分析を行った。銀行は、その業務の特殊性から、自己の固定資産の被害よりも、融資先の被害により、貸倒が発生することの影響が注目される。1995年1月17日の阪神・淡路大震災の時は、銀行によるディスクロージャーは他の業種と比較して少なかったが、その点は今回も同様であった。しかし、今回は決算期末により近い3月11日に発生し、融資先の被害状況の正確な把握も困難ではあったが、銀行による信用リスクの計量化とその開示が進んだこともあり、有価証券報告書に、「罹災地域の債務者」に関する貸倒引当金を掲載した銀行もあった。
また、銀行は国内の各地域に分布しており、かつ店舗の場所も特定しやすいという特徴があり、この要因をイベントスタディーの手法により検証すると、地震発生直後の銀行株式のリターンに県別の店舗比率が有意となることが確認できた。つまり、銀行による被害の開示がなされる前に、市場は負の影響の差異を考慮していたことになり、株式市場では企業の特性を考慮した評価がなされていることが明らかになった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

これまでの2年間において、株式のリターンのデータ、企業の開示行動のデータ、企業の震災による損失を予想するためのデータを概ね整備することができ、かつ銀行業を含めて、イベントスタディーの手法による実証研究を行い、伝染効果の影響を示すことができている。その中で初年度よりの課題であった開示内容による分類の精緻化もほぼ完了することができた。これらの成果に関しては、国内外の学会で発表をし、他の研究者との交流も蓄積が進んでいる。

Strategy for Future Research Activity

今後にまず実施すべき点は、これまでの分析の精緻化をより進めることである。特に説明変数間の相関および経済理論的な意味づけをより深く検証していく必要がある。また、伝統的なイベントスタディーでは、イベントの前後でベータには変動がないことを前提としているが、大震災のような規模の大きな損失が多数の企業に同時に発生したときにベータが変動する可能性も存在しており、近年増えつつあるカルマンフィルターなどの手法を分析に用いて、イベントスタディーの手法を高度化させ、パラメータの変化の可能性を検証する。
次に、震災前後の株式市場の流動性を比較し、不確実性が急速に高まったときの市場変動を検証することを分析に加える。先行研究として、国内株式市場の制度変更などによる流動性指標の分析は存在しているが、震災の影響を検証している例はほとんどない。特に取引時間帯全ての流動性を考慮した実効スプレッドによる検証例は少ないので、意義は大きいものと考えられる。
さらに、これらの成果を口頭発表だけでなく、論文としてまとめ、学術雑誌等への投稿と、書籍としての刊行を目指す。また、震災の被害を語り継いでいくために、これらの研究は継続させていく必要があり、そのための計画なども検討する必要がある。

Causes of Carryover

残額が少額であったため、次年度において支出することで、研究計画上も問題なく効率的に使用できるため。

Expenditure Plan for Carryover Budget

研究発表を行う学会に関する旅費などに使用する予定である。

  • Research Products

    (5 results)

All 2015 2014

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results,  Acknowledgement Compliant: 1 results) Presentation (4 results)

  • [Journal Article] 東日本大震災と金融機関のディスクロージャー2015

    • Author(s)
      吉田靖
    • Journal Title

      東京経済大学会誌(経営学)

      Volume: 第286号 Pages: 151-158

    • Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
  • [Presentation] 大震災と損害保険会社のリスク:状態空間分析を用いた分析2015

    • Author(s)
      森平爽一郎、白須洋子、吉田靖
    • Organizer
      日本ファイナンス学会
    • Place of Presentation
      東京大学本郷キャンパス
    • Year and Date
      2015-06-07
  • [Presentation] 原発事故はシステマティックリスクにどの様に影響したか?-状態空間モデルを用いた実証研究から-2015

    • Author(s)
      白須洋子、森平爽一郎、吉田 靖
    • Organizer
      日本金融学会
    • Place of Presentation
      東京経済大学
    • Year and Date
      2015-05-16 – 2015-05-16
  • [Presentation] 東日本大震災における銀行株の伝染効果2014

    • Author(s)
      吉田靖
    • Organizer
      日本保険・年金リスク学会
    • Place of Presentation
      東京大学駒場キャンパス
    • Year and Date
      2014-11-01
  • [Presentation] The Contagion Effects in the Japanese Stock Market of the Great East Japan Earthquake2014

    • Author(s)
      Yasushi Yoshida
    • Organizer
      ISAF 2014 Tokyo, 3rd International Symposium on Accounting and Finance
    • Place of Presentation
      東京経済大学
    • Year and Date
      2014-09-11

URL: 

Published: 2016-05-27  

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