2013 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災の仮設住宅住民の健康と生活環境の変化に関する研究
Project/Area Number |
25516014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
崎坂 香屋子 中央大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00376419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 穂波 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (20626113)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 岩手県陸前高田市 / 仮設住宅 / コミュニティ / social capital / 被災妊産婦母子保健 / 地域保健 / 東日本大震災 / 健康格差 |
Research Abstract |
本研究は平成25年度、調査対象者とのラポール形成、仮設住宅の状況に通じることを初期の重要課題と位置づけ、「陸前高田地域再生支援研究プロジェクトチーム」(代表:法政大学宮城孝教授)と連携して調査を実施した。 平成25年6月に調査対象地で打ち合わせたのち、7-8月にかけて陸前高田市全仮設住宅の自治会長(区長)から仮設住宅コミュニティの現況、地域住民の生活状況と変化等に関する聞き取り調査を実施した。同時に全仮設住宅の世帯を対象に自記式の質問票調査を実施、2012世帯に配布し、899世帯(有効回答率45.1%)から回答を得た。 自治会長からは、仮設住宅での生活が2年をすぎ以下の点が指摘された。(1)移転計画及び手続きの遅延もあって住民に不安と疲労感が高まっていること、(2)自治会運営の難化、(3)住居の老朽化や設備の不備によって日々の生活に支障をきたしていること等、であった。 陸前高田市全仮設世帯調査では、「日々他人を気にしながらの生活で息苦しい」が6割を超え、「生きて仮設住宅から出られないかもしれない」の意見も見られ、1年前に比べて「健康状態が悪くなった」、「困った時に助けてくれる人が近所にいない」がともに30%を超えていた。これらを目的変数として回帰分析したところ、仮設住宅の生活に不満度の高い人(AOR:2.60,p<0.001),2世代および核家族、単身世帯(AOR:2.13,p<0.001),男性(AOR:1.41,p=0.047),50歳未満(AOR:1.67p=0.007),p<0.05レベルに近い数値として震災前と異なる町に移転居住した人(AOR:1.40,p=0.059),が同定された。自由回答からは、近隣の住人への不信感や孤独感が多数記入されていた。結果は調査地に報告、学会発表を行った。また震災当時、どう対処したか、の知見に関する記録集を地域女性支援会とともに取りまとめ平成26年5月に出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は前述のとおり、被災地での質問票調査の重複および対象住民が長引く仮設住宅で疲弊していること、調査に協力しても住民の声が行政に反映されない失望感があり、被災直後から地域住民への調査を継続している「陸前高田地域再生支援研究プロジェクト」と連携し、質問票、聞き取りを1回に纏めた。本年度はこのプロジェクトとしては初めての全仮設住宅世帯への調査実施であり、複数の研究者と協働することにより効率的に調査が進捗した。 質的調査、量的調査が同時実施できたこと、交通が徐々に復旧してきたため、予定よりも短時間で現地調査を進めることができた。震災以降完全停止であった女性支援団体も再度立ち上がり、女性連合会長の協力により、震災当時、子育て世代の女性たちがどのように被災したか、またどのように被災者を支援したか,し得なかったか、の知見を報告書に取りまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的、内容について現時点では大きな変更はない。しかし以下の3点を研究に追加し、研究成果全体の水準向上を図ることとしたい。 (1)平成25年度の調査結果により、仮設住宅以外に避難している住民のQOL、仮設住宅以外の被災者の状況を明らかにすることも将来の災害への備えとして重要であることが明らかとなった。仮設住宅以外の避難者との比較が仮設住宅の住民の事象や変化を説明するのに重要な根拠となる。仮設住宅以外の地域被災者の調査を追加したい。 (2)仮設住宅から転居した被災者を追跡し、仮設住宅居住時と転出後の生活と健康状態について調査を行う。これにより、仮設住宅での暮らしの影響の測定も可能となる。 (3)全仮設住宅を調査したが、子育て世代からの回答は少なく、また一部の仮設住宅には若い世代がほとんど居住していなかった。災害時の母子保健の観点、子育て世代の被災後の生活については重要であるにもかかわらずほとんど情報が集まらなかった。そのため、次年度は女性、妊産婦、子育て中の母親、障害者などの弱者に焦点をあてて災害時、その後の保護の方途について明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は当初予定よりも調査対象地の交通等の復旧が早く進み、調査研究が効率的に進んだ。そのため、当初計画よりも予算を多く投入して研究活動を前倒しで前に進めた。結果的に少額(21,074円)だが次年度に繰り越す研究資金がでているが、これは年度末の旅費精算を次年度に繰り越すこととしたためである。 上記のとおり、調査研究は順調に推移していることから、年度末に実施した調査旅費の精算分として使用する予定である。
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