2015 Fiscal Year Annual Research Report
東日本大震災の仮設住宅住民の健康と生活環境の変化に関する研究
Project/Area Number |
25516014
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
崎坂 香屋子 中央大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00376419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 穂波 国立保健医療科学院, その他部局等, その他 (20626113)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 仮設住宅 / 岩手県陸前高田市 / 健康 / 震災復興 / レジリエンス / 被災者 / メンタルヘルス |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究結果、成果】居住2年目にあたる2013年に全仮設世帯調査を実施した(N=899)。住民は身体と心の健康が全体の約35%が前年より悪化した、と回答した。仮設住宅は老朽化とともに住民間の近所づきあいも困難を極めた。(1)近隣の音がうるさい、プライバシーが守れない(2)全体の30%は近所に相談できる人はいない、と回答した。(3)自宅再建か、災害公営住宅への移転か、仮設住宅後の情報が限られ決断ができない。等の意見が多かった。 2013年から2015年にかけて毎年調査を実施した。陸前高田市は市内の大規模宅地造成が進み、高台移転計画も決定されたが、(1)宅地に適切な土地が市民の数に比べて少ない(2)造成作業の大幅な遅延、(3) 盛土した地区への移転は人気がない(4)災害公営住宅は高層マンションであり従前の地元の一戸建てのライフスタイルとは相いれず、家賃も高く入居希望者が少ない、(5)自宅再建への補助制度が徐々に改善する傾向にある、等から仮設住宅にとどまった方が得、という意見が多くなっている。そのため2015年夏の仮設住宅調査でも居住率は依然と60-70%と高い。 特筆すべき外部の介入、復興事業として仮設住宅での住民による(1)風力発電機設置(2)逃げ地図作成(避難地形時間地図)、 (3)牡蠣、ワカメ、椿を使った特産品開発(4)若者を呼ぶ農家、漁師宅への民泊プログラムの定期的実施、が実現した。 特に有志の法律専門家による定期的仮設住宅へ出向いての巡回説明相談会は紙芝居を使いつつの高齢被災民へのローン、自宅再建関連法律改正等の説明と個別相談は特筆すべき優れたアウトリーチ介入事業といえる。災害対策は地域創生事業でもあった。 環境変化について、土地整備事業として陸前高田市でも12.5mの防潮堤建設が決定されたが、地元住民の反対は強く、気仙沼市での調査も追加で行った。気仙沼でも住民の声が反映されない決定システムが明らかとなり、今後への布石となる調査結果となった。
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