2013 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災からの農業復興における企業の役割と支援モデルの実証的評価研究
Project/Area Number |
25517007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
渋谷 往男 (澁谷 往男) 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (20557079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 崇裕 東京農業大学, 国際食料情報学部, 助教 (40625076)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 農業復興 / 企業 / 共助 / 企業参入 / 地方自治体 / アンケート |
Research Abstract |
農業と企業の関係が深まりつつあるなかで発生した東日本大震災からの農業復興において、企業の役割も従来になく活発に行われている。本研究は、こうした取り組みを体系化しつつ分析することで、将来起こりうる災害からの農業復興における企業の役割の円滑な発揮や企業と農業の新たな関係についての理論構築を目的としている。 平成25年度の前半では、「2次情報の集中的な収集」によって、企業による農業復興事例を31事例収集し、その内容を分析・整理した。「主要プロジェクトに関する関係者ヒアリング」と合わせた分析により、支援形態として、当該企業による直接支援とNPO法人などを介した間接支援があること、さらに直接支援には企業単独のものと複数社が連携しているものがあることがわかった。支援内容も農業経営、流通販売など事業に参画するものや、人・物・金・情報などの経営資源の提供など多様な内容であることもわかった。加えて、支援する側の企業の特性や考え方から企業の支援活動を4つのパターンに類型化して分析した。さらに、企業による農業復興支援の特性として、企業活動と直結させている企業とあえて切り離している企業があることがわかった。 年度後半では、「被災した地方自治体へのアンケート調査」を実施し、特定被災地方公共団体など76市町村から回答を得た。その結果、被災市町村による企業の農業復興支援に対する期待は震災直後に比較して高まっていること、企業による農業復興支援を受けた実績のある被災市町村は企業による支援が農業復興に不可欠であると認めているとともに、企業の支援と国・県による支援の相互補完関係を構築することが有効であるとしている、等のことがわかった。 一連の研究により、断片的に知られていた企業による農業復興支援が体系化されるとともに、支援を受けた側として市町村の評価が高く、企業支援が有効であることも強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に計画していた研究項目は下記の3点であり、全て達成済みである。 ①2次情報の集中的な収集:既存の論文、報告書、新聞・雑誌等のデータベース検索など2次情報として得られる企業の農業復興支援事例を31事例収集し、企業の特性、支援内容、支援の概要などについて整理し、特性分析を行った。 ②主要プロジェクトに関する関係者ヒアリング調査:2次情報として収集された事例の中から典型的な4プロジェクトについて、企業ヒアリングを実施した。業種は、鉄道業、食品製造業、運輸業など幅広い業種にわたる。これにより、企業支援の目的、スタンス、他機関との連携方法などプロジェクトの詳細な内容を把握することができ、より深い分析が可能となった。 ③被災した地方自治体へのアンケート調査:アンケート調査の準備として、福島、宮城、岩手の各県庁の農業復興担当者とすりあわせを行った後に、特定被災地方公共団体及び特定被災区域の指定を受けた計127市町村の農業関連部署に対してアンケート調査を実施し6割にあたる76市町村から有効回答を得た。 こうした研究の結果、①と②の成果を平成25年度日本農業経営学会大会で報告し、その後東京農業大学農学集報(紀要)に英文論文として投稿中である。また、③の成果を中心とした結果を平成26年度日本農業経済学会で報告し、その後東京農業大学農学集報(紀要)に英文論文として投稿すべく準備中である。英文論文としたのは、東日本大震災からの復興は国際的に注目されているものであり、研究成果を国内のみならず海外にも発信するためであり、当初は想定していなかったことである。このように、研究成果について、学会報告や論文化が当初の想定を超えて進んでいるため、(1)の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もこれまでの研究のペースを維持しつつ、当初の研究計画に沿って実施していく予定である。具体的には、以下の通りである。 ●平成26年度=①農業復興支援企業へのアンケート調査:平成25年度の研究から得られた、農業復興支援企業に対して、企業側から見た復興支援の意思決定過程、事業実施過程、事業実施体制、さらには事業実施の連携先、課題点などを明確にするためのアンケート調査を実施する。②企業による復興支援内容の類型化と特性分析:これまでの各種調査の情報を収集・分析し、支援内容の視点から類型化を行う。③ケーススタディによる復興支援プロジェクトの評価:前項で実施した類型ごとの代表的なプロジェクトを選定し、多角的なケーススタディを実施する。このケーススタディは、企業、自治体、関係する農業者等からヒアリング調査やデータ収集を実施する。 ●平成27年度=④市場メカニズムによる復興理論の構築:企業は農業復興の新たな主体として期待される一方で、経済主体であり、行動の意思決定は経済的な利害得失を抜きには考えられない。さらに、多くの企業はリスクヘッジとして地域側主体との連携や補助金の活用を併せて行っている。こうした点を分析することで、農業復興における市場メカニズム導入の可能性を考察し、理論化を図る。⑤農業復興における自助・共助・公助の位置づけと組織間連携理論の構築:自助・共助・公助の特質と限界を明確化した上で、ケーススタディを参考に、各々のあるべき取組と組織間の相互連携の方策を考察し、理論化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初想定してた物品費について、節約を図った。また、人件費についても節約を図った。 今年度は当初の計画に加えて、入力作業などの人件費がかかることが見込まれるため、昨年度の節約分と合わせて使用していく予定である。
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