2015 Fiscal Year Annual Research Report
野生ニホンザルを用いた放射性セシウムの環境動態と生態影響に関する研究
Project/Area Number |
25517008
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
羽山 伸一 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (80183565)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原発災害 / ニホンザル / 放射線被ばく |
Outline of Annual Research Achievements |
サルは50~100頭程度の母系家族で群れを構成し、群れごとに10平方キロ程度の独自の行動域をもって生活する野生動物である。また、おもに植物の葉や実を採食するため、群れの行動域内における土壌や森林の放射性物質汚染濃度がサルのセシウム濃度に反映していると考えられる。本研究では福島市に生息するサルにおけるセシウム濃度を測定し、その経時的変化や土壌汚染レベルとの関係を明らかにした。セシウム濃度は、2011年4月に10,000から25,000Bq/kgと高濃度を示した。その後、6月には1,000Bq/kg程度にまでいったん減衰し、12月から2,000 から3,000 Bq/kgに達する個体が見られるようになり、2012年4月に再び1,000 Bq/kg前後となった。こうした冬季にセシウム濃度が上昇する現象は、これ以降も本研究期間である2015年度まで毎年観測され、サルの妊娠期間中である冬季に繰り返し再被ばくすることが明らかとなった。また、2015年度においても1,000 Bq/kgを越える個体がいたことから、今後も長期に被ばくし続ける可能性が明らかとなった。 さらに2012年度から、捕殺された直後に心臓採血を行い、血液検査および病理解剖検査を継続している。現在までに、2012年度にはセシウムが検出されなかった青森のサルに比べ、福島のサルでは血球数が有意に低下しており、また4歳以下の幼獣ではセシウム濃度と白血球数の間に有意な負の相関が認められた。同様の現象は、チェルノブイリ災害後に人の未成年を対象とした調査でも明らかになっており、低線量長期被ばくによる影響が疑われる。 チェルノブイリ原発災害では、甲状腺異常や新生児の発育障害などが報告されているが、サルでも長期被ばくによる内分泌器官や生殖への影響が予測されるため、毎年度妊娠率を測定した。2013年度から妊娠率の低下が観測されたが、2015年度では成獣メスがほとんど捕獲されず、妊娠率を推定することができなかった。
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Research Products
(1 results)