2014 Fiscal Year Research-status Report
Web会議システムを用いたオンラインDP(討議型世論調査)の社会実験
Project/Area Number |
25518004
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂野 達郎 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (40196077)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 討議型世論調査 / Web会議システム / 政策判断形成 / 高レベル放射性廃物処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、Web会議システムを用いたDPの社会実験を実施した。①討議テーマは、高レベル放射能廃棄物処分方法について取り上げた。日本学術会議は、2012年に、政府の方針である地層処分に対して暫定保管、総量管理という考え方を提案した。地層処分と学術会議提案のどちらが望ましいかをめぐり討議を行い、討議前後のリスク判断と倫理判断の変容を計測した。②討議参加者は、インターネット調査会社に依頼。同社登録のモニターからWeb討議参加者120人を募集。男女比、年齢分布、地域構成、Web会議システム利用可能という条件でスクリーニング。最終的には、101人の有効参加者を得た。③実験実施時期は、平成27年1月から応募を開始し、3月1日に討議実験を実施した。その間、被験者には、応募時、討議直前、討議直後の計3回、同一の質問紙調査を実施。コントロール群として、非参加者1000名に対する質問紙調査を実施した。④討議実験は、1グループ6から8名のグループ14グループに分け、グループごとの自由討議を70分間行い、討議最後に専門家に対する質問を作成、続く全体会で立場の異なる専門家と質疑を70分間行うことを、計2回繰り返した。各回ごとのテーマとしては、「地層処分 vs 暫定保管・総量管理」、「処分地立地の方針と負担・便益の分担」の二つを設定した。尚、討議参加者には、A4版30頁の討議用資料を事前に配布した。 実験結果の概要は以下のとおりである。①北海道から沖縄まで日本全国からほぼ無作為に抽出された人が、14グループにわかれ政策について話し合う討議空間がWeb空間上に作れた。②Web上の討議においても、実空間上のDPとほぼ同様の意見変容が確認できた。具体的には、討議参加による関連知識の学習、政策判断構造の共有が確認され、DPのフォーマットに従った討議がより合理的な判断の形成につながることが、Web上の討議でも確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の目的は、120人規模のWeb会議システムを用いた討議型世論調査(DP)の社会実験を実施することであった。有効参加者数は、101人と若干目標人数を下回ったが、DPをWeb上に移植し、低コストで実施できることを実証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成26年度に実施した実験結果の分析を行う。分析は、まず、討議参加者と非参加者の比較、参加者の討議前後の比較を、質問紙データを用いて計量的に行う。具体的には、討議参加によって政策判断の構造がどのように変化したのか、事実判断と倫理判断の2側面が政策判断に及ぼす影響という観点から分析を行う。事実判断については、政策判断との論理的整合性を評価することで、政策判断の合理性が高まる効果を確認する。超長期にわたるリスク判断に及ぼす要因として、社会的信頼とエピスてミックな信頼の影響力の差異を比較する。価値判断については、公正感と政策判断の関連から、討議によってRawls的な公正観が政策判断に及ぼす影響が強くなることを確かめる。 続いて、討議記録データをもちいてコミュニケーションの質の分析を行う。質の分析にあたっては、Steenbergen等の開発したDQI(Discursive Quality Index)を参考にする。
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Research Products
(1 results)