2013 Fiscal Year Research-status Report
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25540016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
前田 忠彦 統計数理研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (10247257)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 標本調査 / 層化多段無作為抽出 / 社会調査 / 層間分散 / 地点間の異質性 / 都市度 |
Research Abstract |
本研究の平成25年度研究課題は大別してA理論とB実務の2側面の検討で構成される。Aの理論面では層化抽出における層別変数の効果を本研究の文脈に合わせて適切に評価するための指標の検討を行った。調査において目的変数Yについては回収標本についてのみ値が観測されるが,具体的には,Xで層化しYに対する層化の効果を見るという枠組で,Xの層化変数としての性能を標本に基づき適切に評価するための方法を研究した。平成25年度は単変量的な検討を行い,26年度以降の検討の多変量化に備えた。層化変数に基づく層間分散指標の他,地点間の異質性に関する指標も同時に検討する必要があることが分かるが,これは従来の標本調査理論の枠内で検討可能な話題であった。 Bの実務面では,層化変数群Xについては,平成 17年度と平成 22年度について e-statで公表されている国勢調査の小地域集計(町丁字等別集計)の結果を用いる予定であったが,これは平成26年度継続検討課題とし,若干の軌道修正を行った。すなわち本研究の動機となった平成の市区町村大合併による層化効果の減殺の可能性について,市区町村単位での国政選挙での投票率および政党の得票率データを入手し(以下選挙データ),これに基づく検討を行った。選挙データでは,次のような結果を得た。用いた層化変数は代表的な社会調査で採用される都市規模を反映した比較的粗いもの(5層)を用い,「層化無作為抽出」を想定した設定では,(1)投票率,自民党得票率などで層化の効果が大きい,(2)全般に地点間の異質性を表す相関比については,都市規模が小さいほど大きくなる傾向がある,(3)平成の大合併により層別の効果は減殺された可能性がある,などが示唆された。 また,人口ポテンシャルのような新たな都市度の指標も層化基準として有効である可能性へのヒントを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の平成25年度中の課題は,Aの理論的な検討と,Bの実務的な検討に分けて進めた。 Aの理論的な検討は,従来の標本抽出理論の枠内で必要な概念や指標をまとめたものであり,斬新な成果は出ていないが,次年度以降に必要な検討の方向性を定めることには成功しており,まずまず順調に進んだと言える。 他方Bの実務的な検討については,官庁統計資料に基づく小地域集計の取り扱いに手間取ったため,平成25年度中に充分に検討を終えることができなかったが,これは平成26年度前半に検討を継続する。また軌道修正した「選挙データ」に基づく層化効果の実務的な検討は,当初予定の枠組みに忠実にある程度の成果を見て,学会等で報告済みである。 更に別の共同研究からヒントをえて,当初見込みになかった人口ポテンシャルのような新たな都市度指標の層化基準としての援用可能性など,新たな課題の方向性も見えたことが一つの成果と考えている。 以上を総合すれば(2)のおおむね順調に進展しているとの評価が妥当と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
3年度全体の研究構想の総括と平成26年度の概要:本研究の研究構想は大別してA理論とB実務の2側面の検討とC実証研究で構成される。Aの理論的検討というのは,層化の有効性を評価する指標を本研究の文脈に合わせて検討することであり,Bの実務的検討とは,上記の理論的検討を踏まえて,現実に使用可能な層化変数のうちどの変数が効果を持つのかという問題を,層化変数群Xと目的変数群Yの組み合わせという観点から,Xは官庁統計資料等,Yには現実の社会調査データを利用して検討することを意味する。平成 26年度は,A理論的検討とB実務的検討を行い,27年度前半に実施するC実証研究のためのオムニバス調査の準備も行う。 平成26年度の推進計画:平成25年度はAの理論面では層化抽出における層別変数の効果を本研究の文脈に合わせて適切に評価するための指標の検討を単変量的に行った。具体的にはXで層化しYに対する層化の効果を見るという枠組で,層化の効果を標本に基づき適切に評価するための方法を研究したが,平成26年度は目的変数Yが多変量的である場合に,用いた層化変数Xの効果をどのように総合評価するかの検討を重点的に行う。 Bの実務面では,[1]平成25年度の積み残し課題となった,国勢調査の小地域集計(町丁字等別集計)の結果を用いた検討を進める。層化変数群Xについては,平成 17年度と平成 22年度について e-statで公表されている変数等を利用する。目的変数として統計数理研究所による「日本人の国民性調査」データなどを活用する。[2]また人口ポテンシャル等新たな都市度の基準となりうる変数の層化変数としての性能も検討の視野に入れる。 更に,平成27年度に予定するC実証研究のためのウェブ調査計画を立てるが,上記の検討を踏まえて層化変数の取得(Webパネルで可能な範囲)と目的変数Yの選定に注力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ整理のための補助員の謝金が,予定を2人日強下回ったため。 平成26年度に,やはりデータ整理のため補助員の謝金として,ほぼ同額を上積みして利用する。
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