2013 Fiscal Year Research-status Report
不連続性と極端な変形を許容する連続体力学シミュレーションのための実時間数値積分
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25540044
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菊植 亮 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90362326)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コンピュータグラフィックス / 非線形連立微分包含式 / 柔軟体 / 有限要素法 / 数値積分 |
Research Abstract |
【1】研究代表者らは以前,摩擦と接触を含むシステムの動特性を,不連続な性質を失わずに,連続な常微分方程式であらわす手法を提案した.平成25年度は,それを,多数の節点から構成される連続体モデルに適用する手法を考案した. 【2】実時間シミュレーションにおいては数十分の一秒毎に非線形の連立方程式を解く必要があるが,計算が発散したり,節点がパルス状に飛び出したりするような不自然な挙動を示したりすることがある.この問題を解決するための非線形連立方程式の求解法を考案した.その方法は,非線形連立方程式を線形近似したうえでQMR(Quasi-Minimum Residual)法によって解き,その後,線形近似によって生じた誤差を修正するという手法である. 【3】接触・離脱の不連続変化と非線形弾性を両立する接触モデルを提案した.特に生体材料においては,変位と反力の関係が非線形であり,また,粘性の影響で,反力がゼロになったとき(離脱時)にも変位がゼロにならないことがある.このような反力特性を,連続な常微分方程式としてあらわすことができた.この成果については学術論文として発表済みである. 【4】ひもなどの柔軟長尺物体のシミュレーションは,中実物体のための有限要素法とは異なる手法が必要である.平成25年度は,摩擦を伴う自己接触が発生する長尺物体のシミュレーション手法についても検討した. 【5】弾性体が他の物体と面で接触し,高速な転がりと滑りが発生する状況のシミュレーションは,節点毎に接触力を計算する方法では実現しにくい.平成25年度は,自動車のタイヤに焦点を絞り,タイヤと路面の間の摩擦力(縦力・横力・セルフアライニングトルク)の再現方法について検討を行った.新手法による算出される値を,マジックフォーミュラと呼ばれる実験式によって算出される値に近づける方針について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形連立方程式ソルバと 摩擦と接触を含む連続体シミュレーション手法の確立については,技術的問題がほぼクリアできた.オイラー型接触モデルについての研究も,進展が見られた.
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Strategy for Future Research Activity |
【1】実時間用途向け非線形連立方程式ソルバについては,効果を定量的に明らかにして論点を整理した上で,コンピュータグラフィックス分野へ論文投稿を行う. 【2】摩擦と接触を含む連続体シミュレーション手法については,ある程度複雑な形状の物体との摩擦接触を可能にする方策を明らかにした上で,理論解析と数値実験によって十分な実証をおこない,コンピュータグラフィックス分野の論文誌へ論文を投稿する. 【3】転がりとすべりが生ずる弾性体の摩擦接触については,節点ベース(ラグランジュ型)ではなく格子点ベース(オイラー型)の接触モデルが必要となる.自動車のタイヤを例として,文献中の実験データと整合性のある力学モデルとパラメータ設定法を確立する.このテーマについては,応用力学分野への論文投稿を計画している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,旅費などの見積もりで誤差が生じたためである. 数式処理ソフトのライセンス更新料や,情報収集・成果報告のための旅費および論文投稿料として使用を計画している.
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