2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25540052
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
伊藤 浩介 新潟大学, 脳研究所, 助教 (30345516)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 音楽 / 進化 / 脳 / 事象関連電位 |
Research Abstract |
言語や他の高次脳機能と異なり、明らかな適応的意義の見当たらない音楽は、何故どのように進化したのだろうか。本研究は、従来の行動指標の代わりに事象関連電位を用いて、音楽の系統発生を探る試みである。すなわち、和音やメロディーなどの様々な音楽刺激に対する事象関連電位を種間比較することにより、これらの音楽刺激の脳処理の進化を明らかにすることを目的とする。 3年実験計画の初年度にあたる本年度は、マカクザルを対象に、無麻酔で頭皮上から聴覚事象関連電位を記録するための方法論を確立することを目指した。無麻酔・無侵襲で脳波記録を行うため、チェアを用いて必要最低限の保定をしたことと頭部を剃毛した以外は、ヒト脳波記録と全く同じ方法で、頭皮上の9箇所(F3, F4, C3, C4, P3, P4, Fz, Cz, Pz)、左右の耳朶、左眼窩左下に、ヒト用のコロジオン電極を設置した。その上で、スピーカーから提示した和音や純音刺激に対して、聴覚事象関連電位が安定して再現性よく記録できることを確認した。 次に、1頭のアカゲザルを対象に、刺激間時間間隔を様々に変えた周波数弁別オドボール課題でミスマッチ陰性電位を記録するなど、いくつかの探索的な実験を行った。結果、ヒトとサルでは、聴覚処理の時間幅(temporal window of integration)が異なることが示唆されるなど、いくつかの興味深い知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究により、マカクザルについて、無麻酔・無侵襲での頭皮上脳波記録の方法論を確立した。世界的にも前例がほとんどない試みであり、いくつかの実践上の困難に直面したが、独自の保定法を工夫するなどして解決した。これにより、次年度以降に様々な刺激条件での聴覚事象関連電位を記録する基盤が整備された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究により、マカクザルについて、無麻酔・無侵襲での頭皮上脳波記録の方法論を確立し、1頭のアカゲザルを対象とした探索的実験にて、興味深い知見を得た。平成27年度以降は、他のマカクザルで結果の再現性を検討するとともに、さらに様々な刺激条件でマカクザルの事象関連電位を記録し、ヒトの知見と比較検討していく。並行して、マーモセットにおける無麻酔・無侵襲での脳波記録の方法論の確立にも、あらたに着手する。この方法論が整備されれば、ヒト、マカク(旧世界ザル)、マーモセット(新世界ザル)という真猿類の大きな系統分類学上の区分をそれぞれ代表する種からの事象関連電位データの取得が可能になり、研究の視野が大きく広がる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日程上の都合により出張を延期しために生じた。また、一部のサル用実験機器について、共同研究先の機器を利用することにより、経費を削減することができた。 延期した分の出張に用いるほか、次年度以降に行うマーモセットの脳波記録のための実験機器購入・開発費に充当する。
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