2013 Fiscal Year Research-status Report
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25540061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
宮岡 徹 静岡理工科大学, 総合情報学部, 教授 (00111815)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 錯触 / 3Dプリンタ / fMRI / velvet hand illusion / 脳機能イメージング |
Research Abstract |
平成25年度には,実験的研究および文献的研究を開始した.実験的研究については,fMRI装置を用いたVelvet Hand Illusion(VHI)の研究,および3Dプリンタによる錯触刺激の作成と試行的実験研究を行った.また,文献的研究については,錯触に関する研究論文を集めつつある. VHIの研究については,まず名古屋大学および自然科学研究機構生理学研究所の連携研究者と連絡を取りつつ,fMRI装置内で使用可能なVHI実験用の刺激を作成した.fMRI装置内では,金属を含んだ実験装置は使用できない.VHIは,もともとは金網を両手で挟んで動かしたときに発見された錯触現象なので,金網を2本ないし4本のカーボンファイバーで置き換えた実験装置を,カーボンファイバーとプレキシグラスで作成した.実験協力者(被験者)には,自然科学研究機構生理学研究所のfMRI装置内で,上記の実験装置を用いた脳機能イメージング実験を実施した.実験結果については,現在解析中である. 3Dプリンタによる錯触刺激の作成は,平成25年12月に開始した.3Dプリンタを用いて錯触刺激を作成したいという構想はかねてより持っていたが,高精度の3Dプリンタは高価なため購入できなかった.ところが,平成25年秋に,造形精度0.05mmの安価(46万円)な3DプリンタがMiiCraft社から発売された.そこでこのプリンタを科研費で購入し,試験的に錯触刺激を作成した.作成した錯触刺激は心理実験を実施するのに十分な精度を有しており,実験は成功裏に行うことができた.実験結果については,平成26年度に学会発表する予定である. 文献的研究については,現在,文献を集めて錯触の分類作業を実施中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画では,VHI刺激提示装置を作成し,脳機能イメージング実験を行うことになっていた.そこで,平成25年度には,まずカーボンファイバーおよびプレキシグラスを使用して刺激提示装置を作成し,装置の動作確認を行った.その後,自然科学研究機構生理学研究所で,fMRI装置を用いた脳機能イメージング実験を開始した.何人かの実験協力者について実験を実施する過程で,実験協力者にVHI心理実験による訓練を行った方がVHI現象出現時の脳活動観察結果が明確となることが分かった.そこで,静岡理工科大学で学生にVHI現象を主観的にはっきり体験させる訓練を実施したうえで,脳機能イメージング実験を実施した.イメージング実験の結果については,現在解析中である. また,本研究ではVHI以外の錯触実験も実施することになっていた.しかし,錯触実験の際は造形精度0.1mm程度で刺激を作成する必要があり,困難に直面していた.ところが,平成25年10月にMiiCraft社から造形精度0.05mmの3Dプリンタが発売されることを知り,この3Dプリンタを科研費で購入した.そして,平成25年12月から錯触刺激作成を開始した.はじめに作成した錯触刺激は,最近発見されたfishbone錯触に関する理実験を行うための刺激であった.作成した刺激を計測した結果,刺激が心理実験用として十分な精度を持っていることが明らかとなった.この刺激を用いて心理実験を実施したところ,満足すべき結果が得られた.3Dプリンタを用いた錯触実験の結果については,学会で発表すべく準備中である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降は,VHI実験,VHI以外の錯触実験,および文献情報に基づく錯触の分類に分けて研究を実施する. まず,VHI実験については,平成26年度以降も,平成25年に作成したVHI刺激提示装置とfMRI装置による脳機能イメージング実験を継続する.平成25年度には,実験協力者の訓練の有無によりVHI現象出現量が異なるなどの問題点も明らかになった.そこで,平成26年度以降は,それらを改善した条件下で実験を行う.それらのデータに基づき,VHIを体験しているときには大脳皮質のどの部分が活動するのかを明らかにする. 次に,VHI以外の錯触に関する実験的研究については,おもに3Dプリンタを用いて刺激作成を行い,心理実験を実施する.平成25年度に試験的に作成した錯触刺激については,錯触心理実験用として十分な精度が得られていることがわかった.従来,錯触刺激に関してはさまざまなバリエーションが考えられてきたが,実際に刺激を精度よく手軽に作ることは難しかった.しかし,平成25年度に購入した3Dプリンタでは造形精度0.05mmで任意の刺激パターンを作成することが可能である.そこで,平成26年度以降はさまざまな錯触図形を3Dプリンタで作り出し,心理実験を行う.そしてこれらの錯触の出現メカニズムを,後述の文献的研究の結果と合わせて検討する. 本年度以降は,文献的研究による錯触の分類も本格的に行う.錯触の出現過程には,錯視と同様さまざまなレベルが考えられる.そこで,先行研究を調べ,どのような錯触がどのような感覚情報処理レベルで出現しているのかを推測する.また,必要があれば3Dプリンタで錯触刺激を作り,心理実験により推測の可否についてチェックする.
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