2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25540098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山村 雅幸 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00220442)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | オルガネラ計算 / 糖鎖計算 / DNAコンピューティング / 人工化学 / 人工生命 |
Research Abstract |
地球生命の基本単位である細胞には原核細胞と真核細胞がある。原核細胞はDNA、タンパク質等の生体分子が単一の膜に包まれた構造を持ち、単細胞生物として環境で生き残ることに特化されている。真核細胞はDNA を保持する核、エネルギー生産を担うミトコンドリア、糖鎖など複雑な分子の工場であるゴルジ体等のオルガネラ(細胞小器官)を持つ。オルガネラは原核細胞の細胞内共生を起源とするとされ、二層の膜による入れ子構造を持つ。多細胞生物において様々な組織に分化する高度な機能を実現している。本研究の目的は、真核細胞において合成生物学的な遺伝子回路の組換え技術によって、オルガネラを用いた機能実現の方法『オルガネラ計算』を提案し、数理解析とシュミレーションによってその計算能力を明らかにすることにある。 具体的には、(1)ゴルジ体における糖鎖の形成と、(2)ミトコンドリアへの人工遺伝子回路の組込みの2種類のオルガネラ計算のそれぞれについて理論的に検討した。(1)細胞内の化学物質の分布、糖転移酵素セットの局在、チェックポイント通過条件などを摂動させ、構築される糖鎖構造の集合が、細胞の識別子として機能しうる精度で形成されるかを調べた。(2)既存の標準的な人工遺伝子回路に移行シグナル等を付したモデル化を行った。同時に、テストベッドとなる人工生命モデルを実装した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画のうち、糖鎖計算のシュミレーションは予定通り進んでいる。ミトコンドリアについては文献調査を行い、実験面での困難が明らかとなった。このため、シュミレーション環境を新たに作り上げる必要があり、新たな人工生命モデルを立ち上げた。これらからおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ゴルジ体における糖鎖の形成については、当初計画通り人工化学をベースとし、反応速度の違いを反映できる確率過程を考え、Gillespie の方法によってシュミレータを実装する。原核細胞の合成生物学においては標準的な、転写調整による糖鎖形成過程の制御について検討する。単糖の供給や糖鎖の流出にある種の理想的な状況を仮定して、形成システムとしての能力を糖鎖の繰り返しパターンなどの文法的構造から特徴づける。(2)ミトコンドリア人工遺伝子回路については、ミトコンドリアの遺伝子組換え技術についてサーベイし、真核細胞における合成生物学的な標準技法になりうるか引き続き検討する。同一種のミトコンドリアのみからなる人工遺伝子回路群の挙動を数理生態学的な手法で検討するために、本年度実装した人工生命モデルを用いて解析を行う。
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Research Products
(5 results)