2014 Fiscal Year Research-status Report
間主観の形式化を支援するための分散推論機構とセンサーネットワークへの応用
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25540101
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
沼尾 正行 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (30198551)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 間主観 / 論理型言語 / 分散推論 / 帰納論理プログラミング / FPGA / センサーネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
分散配置されたハードウェアのネットワーク全体で、高階の述語計算を行う方法を提案した。高階の述語を両辺に持つ規則で書き換える機構を実現するのに、計算ノード上にスイッチ、状態記憶と演算回路を配置する。規則中のリテラルLi, Ri が、「(引数1, …,引数p)」と記述されるとする。通常、引数1に述語名を書くが、変数を置くことで高階の柔軟な処理をする。ルールの形式は、「 L1, …, Lm :- R1, …, Rn. 」とする。この形の規則を注意深く記述することで、各種の論理や代数の計算が行える。エキスパートシステムで用いられたプロダクションシステムに似ているが、作業記憶を分散配置することで、分散システムにも適した方法となる。またこの方法によれば、センサネットワークのセンサ間で信憑の候補をやりとりすることが可能になる。すなわち、セマンティックセンサネットワークの構築が容易となる。 本年度は、計算ノードをパケットスイッチと単純なハードウェアで構成し、「1アーク書き換え」をメッセージのやりとりだけで、行う手法について、論文を出版した。並行して、購入済みのFPGAキットを用いて、ハードウェアで実現できるかどうかについても、考察を進めた。共同研究中の企業が、人工知能とFPGAの活用に詳しいので、将来の本格的なシステム構築への布石として、議論を行った。申請者の所属する大阪大学産業科学研究所では、ベルギーのルーベンカトリック大学が運営するimec と共同で、次世代エレクトロニクス技術の開発を進めている。このため、imec の生物系の研究者との共同研究を行い、ネズミの脳のデータについて検討した。また、ルーベンカトリック大学のコンピュータ科学科には、論理と機械学習の専門家が多く在籍しており、共同研究を開始している。これらを訪問すると同時にフランスのナンシーで開催された国際ワークショップにおいて、議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の原型となる研究は、かなり前に行っているが、あまり評価されてこなかった。その理由は、推論機構を考察するばかりで、次についての主張がはっきりせず、研究の意味が伝わらなかったことによると考えている。 (1) 従来の論理型言語の計算モデルに代えて、本手法を提案することの意義について、知識表現などの背景を含めた主張を公表していなかった。 (2)応用を見越した研究の動機付けが明確に伝わらなかった。 (3)効率よく実現するためのハードウェア構成を含めた見通しについて、考えを明確にしてこなかった。 本研究を挑戦的萌芽研究として開始したのは、これらを明確にすること自体がかなり挑戦的なテーマだからである。そこで初年度に開始した、哲学的背景も含めた事柄についての議論を続けた。以上の観点で、本研究は当初の予想通りに進展している。計算機構については、引き続き、細かな課題に取り組んでおり、研究を続けていく。
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Strategy for Future Research Activity |
人の推論は神経のネットワークで行われている。神経のネットワークが言語の記号処理を行っていることになり、本研究の提案とのアナロジーが考察できる。人の推論は、最初のうちは意識的で、ぎこちなく、効率が悪い。何度も似たような推論を繰り返しているうちに、神経ネットワークのトポロジーが変化し、スムーズな処理が行えるようになる。本研究の機構でも、最初のネットワーク上で解釈実行をすると、ハードウェアのネットワークとシミュレートしているネットワークの間の構造が乖離し、動作効率は低くなる。そこで、ハードウェアのネットワークを処理対象のネットワークに合わせて再構築し、適切なトポロジーのネットワークを構築する手法を検討する。このため、imec の生物系の研究者との共同研究を行った。今後は、それを生かして、ネズミの脳のデータについての検討を続ける。 現在のFPGAの多くは動作中にも再構成可能であり、そこから「再構成可能計算(reconfigurable computing)」という考え方も生まれている。それを拠り所に、FPGA上のネットワークの再構築についての考察を進める。 純粋な論理推論だけでは、実問題を解決することはできず、何らかの方法で推論の制御が必要である。節の組合せに重みを導入し、推論を調整することが重要である。その手法を考察し、確率プログラミング、確率推論や機械学習の成果の導入を検討する。規則や論理記述の書き換えなどの操作を重みの調整により、行う手法についても考察する。機械学習手法の一つである「帰納論理プログラミング」分野にも、本手法により新しいパラダイムを提供する。従来の計算機環境との補完関係を確立するため、手続き型言語との相互インタフェースについても検討する。外国旅費と国内旅費を用いた訪問と成果発表を続ける。
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Causes of Carryover |
旅費、設備費、消耗品を他の研究費で支払ったことにより、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
必要な旅費、設備費、消耗品を支出する。また、研究をさらに加速するため、企業との共同研究にも使用することを計画している。
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Research Products
(3 results)