2014 Fiscal Year Research-status Report
全原子量子化学計算によるマルチチャネルオプトジェネティクス用光受容体の分子設計
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25540132
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
櫻井 実 東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 教授 (50162342)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | MDシミュレーション / 光受容体 / ロドプシン / オプトジェネティクス / LOVドメイン |
Outline of Annual Research Achievements |
1)519 nm(緑色)に吸収波長を持つgreen-light absorbing proteorhodopsin(GPR)は、発色団近傍のL105を他のアミノ酸に変異すると広範囲に吸収波長が変化する。本研究では、この波長シフトの原因を、QM/MM構造最適化及び全原子量子化学計算(CIS計算)を用いて解析した。具体的には、タンパク質への結合に伴う発色団の幾何構造変化の効果、静電効果、内部水の効果等について調べた。その結果、Gluへの変異についてはよい再現性が得られたが、他のアミノ酸については今後の検討の余地を残す結果となった。 2)オプトジェネティクスのツールとして重要な位置を占めている光受容体フォトトロピンの機能部位であるLOVドメインについて以下の研究を行った。DNA結合ドメインHTH(helix-turn-helix)を持つ、光受容タンパク質LOV-HTHを対象とし、MDシミュレーション(以下cMD)と、拡張サンプリング法であるaccelerated MDシミュレーション(以下aMD)を行った。具体的には、dark state, light state, 変異体L120K, S137Yの4つの系に対しシミュレーションを実行した。Light stateでは、FMN-Cys75共有結合形成により近傍Gln138の揺らぎが増大し、その結果としてLOVドメインとHTHドメインを繋ぐAla118-Arg215, Ser137-Arg215水素結合が乖離することが判明した。また両変異体ではlight stateと同様、Ala118-Arg215, Ser137-Arg215水素結合が乖離した。さらに、両変異体では、LOVドメインと離れたArg215が近傍Asp212, Glu219とHTH内水素結合を形成し、その結果ドメイン境界に水分子が流入することが判明した。このHTH内水素結合は、LOVドメインのβ-sheetを介した発色団FMNからHTHドメインへの光応答経路において必須の役割をしていると推測された。一方、dark stateでは、Jα-helix N末端のArg152, Arg155が、HTHドメインAsp212と水素結合を形成し、ドメイン境界への水分子流入を防いでいることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度チャンネルロドプシン(ChR)に適用した(QM/MM計算+全原子量子化学計算)のハイブリッド計算法に幾分改良を加えた後、GPRに適用した。吸収波長の実験値との相関についてはまだ十分ではないが、今後改良すべき点を洗い出すことができ、研究展開の方向性について明確にできた。 LOVドメインの研究については、暗状態と明状態の比較、さらには変異体との比較検討により、シグナル伝達機構について詳細な結果が得られ、投稿論文として発表できる段階に達している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ChRおよびGPRの吸収波長制御機構について、さらに、深化した計算及び解析を行う。具体的には、MDシミュレーションによる構造最適化、電子相関を考慮した吸収波長計算法の導入などである。 2)フォトトロピンのLOVドメインと立体構造が類似しているにもかかわらず、シグナル伝達方向(光活性中心とエフェクターの位置関係)の異なる、オーレオクロムLOVドメインについて、cMD及びaMDシミュレーション等を実行し、シグナル伝達機構を原子レベルで明らかにする。この結果とフォトトロピンLOVドメインのそれとを比較検討する。 3)LOVドメインと同様、オプトジェネティクスのツールとして期待されるBLUFドメインの光活性化機能をcMD及びaMDシミュレーション等を実行し、シグナル伝達機構を原子レベルで明らかにする。 以上の研究により、ロドプシン類似体やLOVドメイン等を用いたオプトジェネティクス用ツールの分子設計の指針を得る。
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Research Products
(8 results)