2013 Fiscal Year Research-status Report
電力の地産地消を実現する電力スケジューリングの解明
Project/Area Number |
25540145
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
井口 寧 北陸先端科学技術大学院大学, 情報社会基盤研究センター, 教授 (90293406)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スマートグリッド / タスクスケジューリング / 低消費電力 / 消費電力制御 / スマートメーター / グリッド / クラウド / サーバ |
Research Abstract |
本提案では,再生可能エネルギーを電力として効率的に利用するため必要となる,超分散化された発電拠点や負荷機器の運転スケジューリングの問題に対し,グリッドやクラウドなど分散型計算機システムのタスクスケジューリング手法を電力制御に適用し,地域内での発電と消費をバランスさせるための,マイクログリッド向けの能動的な制御スキームを解明する. 再生可能エネルギーの供給状況は気象状況に応じて刻一刻と変動する.一方で負荷側には,電気給湯器による給湯やプラグインハイブリッド車(PHV)の充電など,締切時間(デッドライン)までに完了すれば十分な機器がある.この問題の性質は,計算機システムのタスクスケジューリングに酷似している.そこで,計算機システムでのタスクスケジューリングの知見を電力制御に適用できれば,効率の良い制御が可能となる.しかし,計算機システムと電力制御では特性が異なるので,その適用に対する問題点や効率の評価,および解決法を見出すのが本研究の目的である. 2013年度は,基礎的知見を得るために,計算機システムの消費電力測定スキームの確立と,測定を通して消費電力傾向の把握と制御,また発熱量の把握を試みた.本提案は,計算機システムの知見に立脚し電力制御を試みるものであるが,まずは計算機システムの電力制御から取り掛かった.提案書の研究計画の通り,電力計測タップを挿入し,リアルな電力使用状況を確認した.そのデータ収集スキームを確立し,PCサーバの電力消費をコントロール可能なことを示した.更に,電力の最適化には大きな計算能力が必要になるので,最適化計算においても地産地消を図るため,多くのPCに搭載されているGPUを用いた計算スキームについても研究した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度は,再生可能エネルギーの発電シミュレータを構成した.サーバにエージェント(シミュレーションのためのプロセス)を設け,過去の日照や風力などのデータから発電量の時間変動を模擬す複数のエージェントを同時に実行させ,マルチエージェント方式でシミュレーション環境を構築した.簡単なシミュレーションの結果,定性的に期待された結果が返ることを確認した.第二に,負荷側のシミュレータとして,負荷シミュレータを作成した.PHVやエアコン,電気ポットなどの電力消費を模擬し,応答として利得を返す.リアルタイム処理の概念を取り入れ,電力と時間の両方についてデッドライン違反を定義した.電力は外部から導入可能なので,固いデッドラインではないが,時間は所定の時間までに動作が完了していないと実生活に支障をきたす.時間のデッドラインを極力守りながら,電力のデッドライン違反を少なくするシミュレーション結果が得られた.機器シミュレータの基礎データとして,PCサーバなどに電力計測タップを挿入し,リアルな電力の使用状況を測定した.この知見を用いて,エアコン制御も含めた効果的な制御方式が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
マルチエージェント方式による電力シミュレータを作成し,第一版は完成し,定性的に電力の地産地消が達成できることが分かるところまで進んでいる.今後は電力シミュレータをより精密なモデルにし,定量的な効果を判定する.電力監視・スケジューラも,初期バージョンは完成しているので,今後は精密化・定量化を進める. 2014年度以降について,電力監視・スケジューラを構築する.電力を監視し,負荷の制御やスケジューリングを行うスキームを構成し,そのアルゴリズムを明らかにする.ここで求められる機能として,超分散の数万~数十万からの機器から刻々と得られる電力情報から個々の機器ごとの相関や時間・天候との相関を計算し,負荷傾向を予測する方法,および時間的・エネルギー的制約条件を満たしながら,電力消費のスケジュールを計算し,機器の運転を指示する機能である.この結果は負荷機器シミュレータに返され,機器の電力制約の変動に対する振る舞いを検証する.既存のグリッド・クラウド計算機向けのリアルタイム・タスクスケジューリング手法を電力スケジューリング向けに改良し,アルゴリズムを開発する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費について,他の出張の間に資料収集などを行うことによって,費用を掛けずに目的を達成することができた. 物品費について,電力測定ツールの購入を考えていたが,小規模なら学内の類似品を借用可能であることが分かったので,初年度は類似品で技術の検証を行った. その他としてソフトウェアがあるが,学内のライセンスが借用可能だったので,利用した. 借用物については,2013年度はたまたま借用でき,費用の圧縮が可能であったが,借用物品の返却を求められた場合には返却する義務がある.その場合は本予算で必要な設備やライセンスを購入する. 研究の進捗としては,おおむね計画通りなので,予算も計画通り執行する予定である. 配分された予算が申請段階で計上した費用よりも少なかったので,借用によって節約した費用は,申請段階で考えていた計画の遂行に充てるよう考えている.
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