2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25540154
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 一博 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (60262101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 寿郎 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (30329081) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 芸術諸学 / 認知科学 / 計測工学 / 文楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
文楽人形遣いにとって「息の合った」状態とは何かを科学的に明らかにするために,本年度は人形遣いの呼吸に焦点を当てて分析を行った. スポーツや洋舞などでは,プレーヤーや演者が熟達するにしたがって,身体運動のある特定のタイミングに彼ら自身の呼吸相が同期することが確かめられてきた.これに対して,能楽では,所作や型などの基本的な演技動作を行った場合,舞台歴の短い演者に比べ,舞台歴の十分に長い演者の身体運動と呼吸相は非同期的になり,両社が互いに独立に行われることが示唆されている(小林・森下,2000;森田).そこで本研究では,同じ日本の伝統芸能でありながら芸態が異なる文楽の人形遣いを対象に,同様な現象が見られるかどうかを検討した.具体的には、人形の演技動作と,三人の人形遣いのうちリーダーであり,演技動作のタイミングなどを決定する「主遣い」の呼吸相の関係を検討した.その結果,型を演じる場合には,能楽の場合と同様に,舞台歴の長い演者の方が短い演者よりも,演技動作と呼吸相とが非同期的になる傾向が確認された.さらに,呼吸曲線の自己相関を算出したところ,舞台歴の長い演者の相関が高いという結果が得られた.これは,舞台歴の長い演者の方が短い演者よりも一定の呼吸を行っていることを示唆している.しかし,型ではなく,舞台上と同様に浄瑠璃に合わせて演技した場合には,舞台歴の長短によらず呼吸の一定性が低下した.その現象の原因を調べた結果,人形遣いの呼吸が,浄瑠璃の語り手である大夫が息を吸うタイミングとある時間幅をもって同期している可能性が示唆された.以上の知見は,文楽研究に新たな知見を与えるものだと言える.
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