2014 Fiscal Year Research-status Report
アンビエント学習支援システム構築を指向した基盤要素抽出のための多元的基礎研究
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25540165
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松居 辰則 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (20247232)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 学習に対する満足度 / 知識獲得 / Amenity of Learning / アンビエント学習支援システム / インタラクション・パターン / 教授戦略 / 学習時の心的状態 / 内省報告 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「知識獲得による学習成果と学習に対する満足度」を統合的に捉える枠組みをAmenity of Learning(AOL)と定義し,学習者にAOLを与え得る学習支援システム(アンビエント学習支援システム)を構築するための基盤要素とその計量手法との関係構造をオントロジーによって体系化を行うことを目的としている.本研究では研究期間全体を「実験フェーズ」(25年度),「モデル化フェーズ」(26年度),「体系化フェーズ」(27年度)に分けて段階的に推進している.平成26年年度は,平成25年度に実施した実験に結果に基づき,教師の振る舞いをコンピュータで疑似的に実現する手法,およびコンピュータで学習者の心的状態を推定するための手法の開発を行った.具体的には主に以下の2点において成果を得た. (1)コンピュータに学習者の心的状態を認識させる手法の開発を行った.視線計測装置,NIRS脳計測装置,発汗測定装置,座圧測定装置から得られる情報と,学習者による満足度等の心的状態に関する内省・内観報告とのマッチングによって心的状態の検出パターンを抽出した. (2)教師と学習者のインタラクション・トリガを抽出し,AOLを与えるための時間構造の整理を試みた. 具体的には,上記の学習に関する多面的なデータをカテゴリーデータとして統合し,相関ルール抽出の手法を用いて,学習者の心的状態と教師の発話行為(行動と内容)との関係を導いた.特に,学習時の満足感が高まっている状態と,逆に不安感(shame)を抱いているよう状態に関しては不偏性の高い関係を導くことができた. なお,この結果の一般性の主張に関しては平成25年度・平成26年度に引き続き,同様の実験の継続が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の主たる成果として,学習者の心的状態と教師の発話行為(行動と内容)との関係を導いた.ただし,今回は特殊な計測装置を用いての結果の整理に留まっており,本研究における開発コンセプトである「コンピュータの標準的なデバイスから得られる」情報との近似を行うことは今後の課題としての残された.また,平成26年度の「モデル化フェーズ」で計画していた,「実験フェーズで得られた情報から,教師の振る舞いをコンピュータで疑似的に実現する手法(詳細は下記)」に関しては,十分な成果を得ることができなかった. ----- 教師の発話や振る舞いをコンピュータで疑似的に実現する手法(音声,テキスト,画像等の提示)の開発.なお,学習の対象領域における学習者の知識状態,理解状態を推定し,適応的に問題等の提示を行うことも(従来のITS研究の成果により)可能であるが,本研究においては,従来のITSとの連携(上記のIMS参照)までは行わない. ----- 上記のように「やや遅れている」状態の評価に至った理由は,学習者の心的状態と教師の発話行為(行動と内容)との関係を導くためのデータ処理に予定以上の時間を必要としたことである.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度(最終年度)は「体系化フェーズ」である.「体系化フェーズ」ではAOLを実現するための基盤要素(教師の振る舞いや発話,学習者の心的状態,心的状態推定のための計測情報,インタラクションの内容,インタラクション・トリガの時間構造)の関係構造をオントロジーによって体系化を行う予定である. オントロジーによる体系化に関して申請者らは「色彩感情に関するオントロジー」,「多肢選択問題解答時における心的状態と視線情報の関係構造に関するオントロジー」,つまり工学分野ではないソフトな分野に関するオントロジー構築の実績を有しており,本研究においてこの実績を十分に生かすことが可能であると考えている. 本研究の最終ゴールとしてオントロジーの妥当性評価を実施し「アンビエント学習支援システム」の設計基盤として提供することを目指す.さらに,アンビエント学習支援システムの運用段階では「オントロジーに基づいた推論方式」の必要性を予見しており,本研究においてはその理論的検討を行う予定である. なお,平成27年度の「体系化フェーズ」の研究を行う前に,平成26年度に課題として残された,「実験フェーズで得られた情報から,教師の振る舞いをコンピュータで疑似的に実現する手法」に関しては,継続して研究を行う予定である.また,平成26年度の成果として得られた成果(学習者の心的状態と教師の発話行為(行動と内容)との関係)の「コンピュータの標準的なデバイスから得られる情報との近似」に関しても併せて検討を行う予定である.
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Causes of Carryover |
研究を遂行するための物品の一部が既に所有している物品で代用可能であったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度の物品等の購入に合算して使用する.
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Research Products
(11 results)