2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25540170
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 裕之 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (40243977)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 漫画 / アニメーション / 仮現運動 / 実験心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、漫画やアニメにおいて用いられる線を用いた動きの表現が、実際に効果的に作用しているのかどうかを実証的に調べることであった。研究は3段階で行った。まず、H25年度は、漫画において用いられている、動きを表す線を調査した。日本の代表的な漫画雑誌に掲載された漫画223タイトル4587ページの21493コマを調べた結果、各タイトルにおいて平均40%(最大87%)のコマに線による動きの表現が用いられていた。H26年度は、テレビ放送用アニメーション番組について、30分枠54番組における線による動きの表現を調査した。総数16541ショットのうち885(5.2%)ショットに線またはそれに類する形態による動きの表現が見られた。これらは、漫画における線をそのまま用いたものだけではなく、線自身にさまざまな動きが加えられており、線による動きの表現がアニメにおいて拡張された表現となっていることを示している。漫画においてもアニメにおいても放射線によって奥行き方向の動きを表現することがあるが、アニメにおいては、線自体が動くことにより、カメラの動きや視聴者自身の移動のシミュレーションとして機能していることが示唆された。H27年度は、アニメにおける線が実際に動きの知覚に貢献するのかどうか、仮現運動の滑らかさを基準として評定させる実験によって検証した。その結果、通常テレビを見るくらいの視野においては、線を追加した場合のみ広範囲の仮現運動を滑らかになることが確認された。線が現れるタイミングによっても効果は異なっていたが、動きの前後に表示される2つの対象のいずれかと同時に線を表示しても、動きを滑らかにする効果が確認された。これらはアニメや動画の表示における超高速の移動の表現に有用であることを示している。これらの結果を、2つの論文にまとめ、投稿した。
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