2014 Fiscal Year Research-status Report
生物の基本原則の導入による「人間的で自然な強く無さ」を伴うゲームAIの自己組織化
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25540172
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
片寄 晴弘 関西学院大学, 理工学部, 教授 (70294303)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ゲームプログラミング |
Outline of Annual Research Achievements |
ビデオゲームでは,Computer担当エージェント(=NPC)の振る舞いのデザインが当該タイトルのプレイフィールにおいて大きな影響を与える.売り上げにも直結する事項であるため,市販ゲームにおいては,長らく,人手による詳細な作り込みが実施されてきた.2000年後半以降,機械学習の応用領域として,環境情報と獲得スコアからNPCの行動パターンを自律的に獲得する研究が行われるようになり,アクションゲームやトレーディングカードゲームを対象とした研究において,極めて強いNPCを自動構成できることが示された[藤田05, 藤井09, Togelius10]が,「自動獲得されたNPCの振る舞いは過度に最適化され,機械的に映る」という課題が浮かび上がってきた.
本研究では,『生物の「身体的な制約」と「生き延びるために必要な欲求」の条件下で最適化された行動を,ヒトは『自然な振る舞い』であると受容する』という作業仮説を用意し,その仮説に基づいて NPCの振る舞いの強化学習により自律的に獲得する機構の構築に取り組み,アクションゲームを題材とした NPCの『自然な振る舞い』の自動獲得とその評価研究に取り組んできた.
研究は初年度に大きく進ちょくし,Q学習, A-star アルゴリズムの双方で,「生物学的な制約」を導入した場合とそうで無い場合において,前者で,有意に「人間らしい」と判定される振る舞いが生成されることを確認した.この成果に対して,この領域のフラグシップ 国際学会 International Conference on Advances in Computer Entertainment Technology で,Gold best paper award を受賞,また,2014年7月に情報処理学会論文誌に推薦論文が掲載されるなどの具体的な成果が上がっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は初年度に大きく進ちょくし,本提案によるアプローチによって生成されたNPCの振る舞いが,有意に「人間らしい」と判定されることを確認した.その一方で,ヒトが「人間らしい」あるいは,「自然である」と判定した場面は,評定者のゲームスキルやメタ知識に応じた着眼点でばらつきが生じるという状況も観測してきた.この部分に対する解釈,および,適切な評価法を模索・提案していくことが,本研究のみならず,エンタテインメントコンピューティング研究領域全般におけるきわめて重要な課題だと考える.
「生物の基本原則による「人間で自然な強く無さ」を伴うゲームAIの自己組織化」という課題について,起案当初の目標をクリアすることはできたと考えるが,現時点において,より適切な評価法の提案と実践,本提案の他領域への応用性等の課題が残っている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画策定時は,二年目の評価研究として,1)集積した人間プレイヤのプレイログと獲得されたNPCの行動パターンの比較,2)熟達にかかる人間プレイヤのメタ知識の抽出,を掲げていたが,研究の過程によって明らかになってきた評定者のゲームスキルや洞察力の差異に重点をおいた評価法を実践する.従来研究においては,評定者のゲームスキルに対応するものとして,初心者,初級者,中級者,上級者別に,評価が実施されてきたが,この分類自体,プレイ年数等によるものがほとんどであり,精緻な規準で分類されているとは言いがたい.ここでは,より,定量的なスキル区分を想定し,さらに,そのスキルに応じて形成されてきたであろうゲーム全般に対するメタ知識の分類基準についての検証を実施し,その上で,評価実験を執り行う.
本研究はゲームAIの自己組織化を取り扱ったものであるが,学術的な興味の本質は,『生物の「身体的な制約」と「生き延びるために必要な欲求」の条件下で最適化された行動を,ヒトは『自然な振る舞い』であると受容する』という作業仮説の検証の部分にある.ゲームAIの構成とは離れるが,演奏表現において「自然である」と判断される「フレージング」もこの作業仮説によって構成できる可能性があると考えている.その実験に向けての実験準備に着手する.
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Causes of Carryover |
2014年度に「人間的な自然な強く無さ」を伴うゲームAIの評価実験を進めてきた所,評定者のゲームスキルやメタ知識に対応する形でデータがばらつくことが明らかになってきた.このことに対応した新たな実験計画を企図した結果,未使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
評定者のゲームスキルやメタ知識をコントロールした評価実験,ならびに,その解析結果の国際会議での発表を次年度に行なうこととし,未使用額はその経費に充てることとしたい.
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[Presentation] 『魅せる』の工学2015
Author(s)
片寄晴弘, 福地健太郎, 寺田努, 松浦昭洋, 橋田光代
Organizer
情報処理学会 第106回MUS・第35回EC合同研究発表会
Place of Presentation
甲府富士屋ホテル (山梨県 甲府市)
Year and Date
2015-03-02
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