2014 Fiscal Year Research-status Report
胎生種子の形状に着目したマングローブ群落の動態に関する研究
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25550007
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
古里 栄一 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (30610901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 規夫 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (80323377)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マングローブ / 塩分成層 / 潟口 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,当初計画に基づいたトピックを実施するとともに,3ヵ年の研究全体を見通して対象とするフィールドやマングローブ種および観測事実の取得と仮説構築も念頭におき,以下の研究を行った. まず、本研究で提案される「塩分濃度-浮遊形態-輸送形態-群落分布変化」に関する理論の基礎となる、現地における近年の群落分布変化について、過去の群落分布の追加現地調査による見直しを行った。その結果、特徴的な胎生種子が最も長いRhizophora mucronataが塩分濃度変化後に速やかに潟湖全域に拡大したことが推測された。また、胎生種子の浮遊、輸送特性については、昨年度の室内実験結果のとりまとめにより、本種の浮遊特性が明らかになったと共に、現地の実験に適した条件を選定した水域での輸送実験により、明らかに本種は浮遊形態に応じて輸送速度が異なることが明らかとなった。これは現地における本種の分布が塩分濃度変化の後に速やかに変化した事実と整合していると考えられた。このような現象の背景となる、潟湖における潟口形状の人為的変化と塩分濃度、成層との解析モデルについては、解析対象潟湖を増加させ、その適用範囲を明らかにした。 これらの成果は一定のレベルに達したことから、国内外での学会発表を積極的に行い、研究成果を周知するとともに研究者との意見交換を行い、本研究の有用性や学術的な正確さについて確認できた。特に、共同研究の相手国であるスリランカでの国際学会での発表は好評であり、塩分成層モデルのみであってもスリランカでの他の潟湖での適用可能性について、別のスリランカの大学の研究者から照会を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画においては、平成26年度は平成25年度の実施内容を継続し、最終年度のとりまとめに向けて、①沿岸潟湖の塩分成層に関する、潟口形状を考慮したモデルの開発、②マングローブ胎生種子の塩分成層や濃度に応じた輸送に関するモデルの開発、③これら2要素を考慮して、対象潟湖における潟口の人為的改変で生じた塩分濃度や成層およびマングローブ群落の分布変化の解析を行った。これらに基づいて、最終目的であるう、④適切な潟湖管理に資する、潟口形状の整備、改変の方策を提言するための基礎的知見の構築を最終年度に達成する。 これらから、代表的な達成度をあげると以下のとおりである。 ①沿岸潟湖の塩分成層に関するモデルの開発、については、平成25年度に開発した一次元モデルのキャリブレーションとして、新たな潟湖(レカワ潟湖)を対象として解析を行った。本潟湖は平成25年度に対象としたコッガラ潟湖と同じく近年経済発展に伴い潟湖部の地形改変が生じて水産資源等に問題が生じている。ただし、水文学的な条件がコッガラ潟湖と対照的であるために、スリランカの様々な潟湖への適用性を評価する事も念頭に置き、選定した。その結果、潟口が季節的に閉塞する本潟湖では、非定常性が卓越するために、擬似定常状態を前提としたモデルでは、塩分成層の評価において実測値との誤差が大きいことがわかった。このことから、本モデルが適用可能な潟湖の条件として、常時潟口が開口しているタイプの潟湖であることが挙げられた。 ②次にマングローブ胎生種子の塩分濃度に応じた輸送モデルについては、平成25年度に実施した室内実験結果をとりまとめ、塩分濃度と浮遊形態、浮遊深度のモデルを構築した。また、波高と浮遊深度との相対的な関係に基づく波力の影響を考慮した理論モデルも構築し、スリランカで共同で実施した現地観測との一致度を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の成果および達成度に加え,研究目的を達成するための最適な手法の選定という観点から,平成27年度は最終年度として、以下の方策で研究を推進する予定である. まず塩分成層モデルについては、一定の完成度に達したので、モデルを用いた対象潟湖(コッガラ潟湖)における潟口の変化と塩分成層について解析し、望ましい潟口処理の方向性について検討する。なお、平成26年度において、本モデルの前提である擬似定常状態の仮定の問題についても研究を行い、モデルの適用範囲を拡大する試みも行う。 同時に、マングローブ胎生種子の浮遊、輸送モデルについても現地における輸送実験を追加して実施するとともに、塩分濃度に応じた浮遊状態と輸送速度を関連されたモデルを完成させるとともに、より完成度を高めるための今度の課題も検討する。 最後に、それらの両モデルを組み合わせて、現地で生じたマングローブ群落分布の塩分濃度の変化による拡大等を解析するとともに、本研究計画の最終目的である、今後のマングローブ群落に対する人為的影響として、温暖化や潟口形状改善方策の影響評価を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、平成26年年度末に学会発表を国内外で実施する予定のうち、データの見直しの必要性や十分な解析を行う等のため、発表を見送ったものが存在するためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は最終年であることから、学会発表を行うとともに、とりまとめに向けて必要に応じた追加実験や調査および解析や文献調査等を行う予定である。
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