2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25550024
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 義久 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 准教授 (20302672)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 放射線 / 癌 / DNA二重鎖切断 / DNA修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、放射線によって生じるDNA 損傷の中で最も重篤と考えられるDNA 二重鎖切断(DSB)の非相同末端結合(NHEJ)による修復において、プロセシングの必要がある損傷とない損傷の選別機構(これを「トリアージ」機構と呼ぶこととする)を明らかにすることを目的としている。25年度には、細胞抽出液に制限酵素処理したプラスミドを加えて反応させた後、リアルタイム(定量的)PCR法で結合産物の量を解析するin vitro DSB修復実験系を構築した。26年度は反応産物の構造、配列解析を予定していたが、副産物生成の可能性が考えられたため、反応条件の再検討を行った。また、NHEJによるDSB修復の最終段階に働くXRCC4の欠損細胞や変異細胞を用いて、正常細胞との比較検討を行った。その結果、制限酵素の種類や組合せによっては放射線感受性と整合する結果が得られたが、一方で、予想に反して欠損細胞で増幅が最も多く見られたものもあった。これについては、プライマー設計などの再検討の余地があるが、酵母等を用いた研究でも類似の現象が報告されており、結合に誤りを伴いやすい形状の損傷ではNHEJ系が逆に結合をブロックする機構も考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、リアルタイム(定量的)PCR法を用いてDSB修復をin vitroで再現することを目指しているが、そのためには、制限酵素処理時の未消化DNAやPCRの副産物が問題となることが分かり、これらの解決に時間を要した。一方で、当研究室の関連研究で解析が進んだXRCC4欠損細胞や変異細胞の利用で、放射線感受性とDSB形状ごとの修復能の相関解析を可能とするオリジナルの実験系ができつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は反応物解析を行う。また、並行する研究において新たな変異体が見出されたため、それを用いた反応を行う。さらに、学会、論文などでの成果発表を行う。 本研究に関連して、平成26年度には新たな重要知見がいくつかあった。(1)新たなNHEJ因子PAXX (Paralog of XRCC4 and XLF)が発見された。PAXXは名前が示す通り、XRCC4およびXLFと構造上類似する。XRCC4およびXLFがDNA ligase IVとともにDSBの結合段階に働くのに対し、PAXXはKuと相互作用し、NHEJ複合体全体の安定化に関わる可能性が考えられている。(2)XRCC4に変異を有する患者が同定された。これまで同定されている他のNHEJ因子変異患者と類似した小頭症、発育不全などを呈するが、一方で、免疫不全がほとんど見られないのは予想外であった。変異の部位はいくつかあるが、それぞれがXRCC4の機能にどのように影響するか不明の部分もある。平成27年度はこれらの新たな知見も踏まえ、DSBの形状による修復プロセスの違いに迫りたい。
|
Causes of Carryover |
本研究では、リアルタイムPCR法を用いた新たな試験管内DNA二重鎖切断修復法の開発と、DNA末端形状による修復機構の違いの検出を目指している。平成26年度には反応産物の構造、配列解析を予定していたが、副産物生成の可能性が考えられたため、反応条件の再検討を行った。また、並行する研究において新たな変異体が見出されたため、それを用いた反応を行い、反応産物の構造、配列解析を平成27年度に行うこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
試験管内DNA二重鎖切断修復反応産物の構造、配列解析を行う。また、得られた成果を国内外学会、国際学術誌において発表する。
|