2015 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストンH3ジメチル化におけるE3リガーゼRNF168のアダプターとしての役割
Project/Area Number |
25550028
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中田 慎一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70548528)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | DNA損傷応答 / DNA修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA2本鎖切断部位には、様々な分子が局在し、細胞周期の停止やDNA損傷修復を制御している。53BP1はDNA2本鎖切断部位に集積する代表的な分子であり、DNA切断端において、DNAが過剰に削られるのを抑制する役割がある。E3ユビキチンリガーゼのRNF168は53BP1のDNA損傷部位への局在に不可欠な分子である。RNF168はDNA2本鎖切断部位においてヒストンH2Aをユビキチン化すると考えられている。しかし、(研究開始時点では)53BP1はユビキチン化ヒストンH2Aに結合せず、メチル化ヒストンH3およびH4に結合するとされていた。なぜ53BP1のDNA損傷部位への集積にRNF168が不可欠であるのか、この疑問点は研究開始当初解明されていなかった。 報告者は、自らのプロテオミクスの結果を基に、次のような仮説を立てた。 RNF168はBAT3-DOT1Lと複合体を形成し、RNF168がDNA損傷部位にBAT3-DOT1Lをリクルートし、DOT1LがヒストンH3と結合し、DNA損傷部位において集中的にヒストンH3 K79をジメチル化する。そして、 DNA損傷部位のジメチルヒストンH3 K79に53BP1が結合する。 この仮説を検証する研究を行った。BAT3-DOT1L-RNF168はDNA損傷の有無にかかわらずタンパク複合体を形成しており、BAT3およびDOT1Lはいずれも53BP1のDNA損傷部位への局在に必要であることが示された。一方、RNF168の変異体を用いて行った実験では、RNF168のDNA損傷部位への局在量が少なくても、53BP1が多量にDNA損傷部位へと局在することが観察された。このことから、RNF168がアダプターとして53BP1のDNA損傷部位への局在を制御する機構は存在しうるが、この機構のDNA損傷応答への寄与は限定的であることが示された。一方、RNF168のDNA損傷部位への局在には既報とは異なる分子機構が存在することが示唆された。
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