2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25550037
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
横谷 明徳 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門先端基礎研究センター, 研究主席 (10354987)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射線照射効果 / 細胞内小器官 / ミトコンドリア / 共生応答 / タイムラプス / 細胞ダイナミクス / ライブセルイメージング / マイクロビーム |
Research Abstract |
本研究の目的は、細胞内小器官の間に放射線ストレス応答に関する協調(シナジー)効果があるかどうかを探ることにある。本年度はATP生産の要であるミトコンドリアの形態や機能の放射線照射による変化を追跡するための実験手法の確立を目指した。動物培養細胞をX線照射した後に、ミトコンドリアを特異的に染色する蛍光試薬で処理することで、顕微鏡下で培養しながら継時観察するための条件を検討した。また、得られたミトコンドリア動態の変化を解析する方法の検討も行った。ミトコンドリアを特異的に赤に染色する試薬であるMitotracker Redを用いた断片化の観察に加え、ミトコンドリア膜電位に依存して蛍光色が変わるJC-1も利用することで活性部位の位置の変化も観察した。 ヒトやマウスの正常細胞に対して照射し、24時間ごとにミトコンドリアの断片化を観察するとともに、膜電位を250秒間タイムラプス観察し動画を作成した。得られた動画像を元に、ミトコンドリア活性部位(膜電位が高い部位)の移動速度を数値化することで動態変化の解析も行った。照射すると細胞周期が停止した上でミトコンドリアの断片化が起こること、さらに活性部位は照射後24時間から48時間にかけて空間位置を大きく変える現象があることが明らかになった。これらの成果は国際会議(HITSRS2013、千葉)で発表し、またミトコンドリアの断片化などの構造変化の知見については、マイクロドジメトリーの国際会議(MICROS2013, イタリア)において発表しProceedings(査読付き論文)として投稿中である。 本年度検討した実験条件を元に、次年度はX線マイクロビーム照射による細胞質あるいは細胞核のみの部分照射による効果のライブセル観察を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
JC-1染色した細胞内ミトコンドリアは、連続観察を行うと次第に退色して行くため、観察時間や観察時の露光量などの検討に多くの時間を割いた。ミトコンドリアそれ自体が数分の間に激しく運動すると共に、膜電位の高い部位もミトコンドリア上をスライドする現象が見られた。これらのミトコンドリアのダイナミックな変化を観察するために、現状での最適条件として、照射後一定時間毎に250秒間の観察を行い、観察の直前に蛍光試薬を加えることとした。当初の計画通り観察条件が整い、順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度検討した最適な実験の条件により、次年度は放射光X線マイクロビームの照射実験への移行する。実験を行う放射光施設である高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーには、連続して継時観察するための顕微装置が整備されていない。そこで、本年度使用した蛍光顕微鏡をフォトンファクトリーに移設して実験を行う予定である。その際にマイクロビーム照射用顕微ステージと観察用蛍光顕微鏡の細胞位置座標を同期する必要がある。両顕微装置の間で位置決めが精度よく行うための、照射用細胞ディッシュホルダーを新たに開発する予定である。
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