2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25550037
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
横谷 明徳 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主席 (10354987)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射線効果 / 細胞内小器官 / ミトコンドリア / 共生応答 / タイムラプス / 細胞ダイナミクス / ライブセルイメージング / マイクロビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、細胞内小器官の間に放射線ストレス応答に関する協調(シナジー)効果があるかどうかを探ることにある。昨年度は、細胞内小器官の中でも特にATP生産を担うミトコンドリアに着目し、これを特異的に蛍光染色した上で、ヒトやマウスの細胞全体に通常のX線を照射した後のミトコンドリア動態変化を、ライブセルイメージングにより追跡する手法を確立した。その成果は、本年度になって査読付き論文(Noguchi et al. Radiation Protection Dosimetry)として受理された。さらに放射光X線マイクロビームを利用して、ミトコンドリアが存在する細胞質のみ、あるいは細胞核のみ、さらには細胞全体を照射する実験を、KEK・PF のBL-27B を利用して実施した。ヒト繊維芽細胞(BJ1 hTERT Fucci) へ6Gy相当のX 線マイクロビームを照射した後、ミトコンドリア活性の指標となる膜電位に依存して異なる蛍光を発色する試薬を用いてミトコンドリアを特異的に染色することで、照射によるその動態変化のタイムラプス観察を行った。その結果、細胞核照射及び細胞全体照射では、照射後24時間の観察時間内では、活性部位の面積はコントロールとの差はなかった。一方細胞質照射では、活性部位の面積の優位な増加が起こり、照射後24時間に遅延的なミトコンドリアの活性化が引き起こされることが示唆された。以上の結果から、核が照射されDNAが損傷を受けることで、ミトコンドリア活性を抑える何らかのシグナルが核からミトコンドリアへ伝達された可能性が示された。ミトコンドリアの照射によって引き起こされる二次的な事象が、細胞核やその他の細胞小器官に放射線ヒットの情報を伝達するシナジー効果が存在することを示唆する結果を得ることができた。
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