2014 Fiscal Year Research-status Report
化学物質曝露によるエピゲノム撹乱は脳で選択的スプライシング異常をもたらすか?
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25550039
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
矢追 毅 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40311914)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 選択的スプライシング異常 / エピゲノム異常 / 環境化学物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
①研究目的:我々は、胎生期BPA曝露が生後大脳の神経細胞に影響を及ぼす分子機構として、エピゲノム異常を介した選択的スプライシングの撹乱を想定しその検証のため本研究(3年間)を企図した。本研究を通じて「質的な」発現変動の重要性に着眼することで、広く化学物質影響の分子機構解明に新しい視座を与えることをめざす。 ②研究計画・方法: 平成25年度は、仮説成立の前提となる「環境化学物質曝露による選択的スプライシング制御の撹乱」が実際に生じていることを示すデータを得た。一方、予想外にもいくつかの特定クラスの遺伝子群に属するものが濃縮されていたことから、当初計画していた機能アノテーション情報をもとに以後の解析対象遺伝子を絞り込み研究を進める方針に変更を迫られた。 平成26年度は、マウス不死化神経細胞株培養系での曝露実験により、対象エクソンでスプライシング異常を来すかどうかの確認を行い、候補遺伝子を絞り込んだ。対象エクソン周囲の配列特徴は複数に類型化され、必ずしも特定エピゲノム(CpGメチル化)の状態変化がスプライシング異常の原因になるとは限らないことが示唆した。そこでエピゲノム状態の変化の結果である局所的なクロマチン状態の変化とスプライシング効率変化との対応が見られる遺伝子に直接絞り込むことを試みた。これは当初計画3年目の内容を前倒しする内容であり、より分子機構に関わる知見を得やすくなることを期待した。 そのために、標的配列領域の局所的クロマチン状態変化を中程度の高スループット性で捉える新規技法が必要となり、予算内で実現するアイデアを得たことから開発を行い、利用の目処をつけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
検証仮説の前提である「環境化学物質曝露による選択的スプライシング制御の撹乱」は実際に成立していた。一方、想定していたエピゲノム情報がDNAメチル化に限定されない可能性が配列特徴の解析から明らかとなった。そこで、当初計画で3年目に予定していたクロマチン状態の変化を先に解析することで、エピゲノム異常を来している遺伝子を絞り込むことにした。この方針は計画立案時には困難と予想し採用せず、絞り込まれた遺伝子を対象に検証する予定であった。しかし、容易に行える新規技法のアイデアを得て、予算内で開発しその後の研究遂行が可能であると判断し、そのために時間と労力を割いた。以上より進捗に遅れが生じている。しかし、他の研究への応用性・利便性がある新規技法という想定外の成果を得ることができた。この技法により計画進捗の遅れは取り戻せると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
スプライシング制御の撹乱が局所的クロマチンリモデリングに基づくことを示す証左を一部の遺伝子のみで調べる予定であった計画を新規技法の開発を受けて変更する。即ち、そのような遺伝子を、不死化神経細胞株培養系でもスプライシング異常が再現される遺伝子群のなかから検索する。標的エクソン配列は、特徴の違いによりいくつかに類型化されることを明らかにしているので、それを考慮して対象遺伝子をいくつか選び、エクソン周囲のエピゲノム情報の変化を可能な限り明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
年度末に実施する予定であった実験に使用する機器が次年度はじめまで一時使用できない状況が生じた。必要となる試薬の有効期限が短いこと考慮して年度内に購入することは適切でないと判断し、次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度4月に上述の実験機器が使用可能になったため、繰り越し相当分は第一四半期に使用する予定である。
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