2013 Fiscal Year Research-status Report
閉鎖スキー場を野外操作実験地とした豪多雪地帯草地における森林生態系再生の評価
Project/Area Number |
25550081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
箕口 秀夫 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30291355)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 草地生態系 / 豪多雪地帯 / 半自然草地 / 人為的撹乱 / 生物群集 / 生物多様性 / 絶滅危惧種 / ハタネズミ |
Research Abstract |
豪多雪地帯において人為的に形成された無立木草地の維持・管理の手法,技術を検討するため,放棄カヤ場を地域産業に活用している観光ワラビ園において,地域の生物多様性を野外操作実験地ととらえ,植生変化のパターンと生物間相互作用を軸としたその形成プロセスを明らかにした。その結果,昆虫においてワラビ園は,その人為的な管理がクロシジミやコウチュウ目などの畑地や攪乱依存種の生息地となりえることが明らかになった。明るい環境を好むバッタ目も生息しており,管理によって抑制されている植生の遷移はワラビが地面を覆うまでの間,明るい環境をもたらしていると考えられた。またワラビを食草とする昆虫も出現していた。ススキ群落との隣接している環境では,バッタ目やヒメシジミ等が生息していた。このためワラビ園の管理も大面積一律に実施せず,ある程度ススキ群落をパッチ状に維持することが必要である。ワラビ園としての管理は,希少な生物の生息地になるが,多くの昆虫の生息場所としては不十分であると考えられた。そのため本来の半自然草原として十分な機能を果たしているとは言えないが,管理依存の生物が生息する環境だといえる。しかし,半自然草原が減少していることから,ワラビ園のような希少生物が生息できるような環境を維持することは重要である。一方,哺乳類を指標とした際のワラビ草地は,草地の環境に適応したハタネズミではなく,森林に適応したアカネズミが優占していた。ハタネズミの環境選好性に正の影響を与える要因よりも,負の影響を与える要因がより強く作用した結果,調査地点によっては,ハタネズミの好むススキが優占する環境があるにも関わらず,個体数は少なくワラビ草地がハタネズミに適した環境ではないと結論づけられた。このことから哺乳類を指標とすると,ワラビ草地の草原生態系としての機能は限定的であると評価できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに形成された草原生態系の生態学的特性を明らかにすることで,豪多雪地帯における生物多様性の保全を意識した景観管理の技術の確立に資することが本研究の目的であるが,昆虫群集について,本来の半自然草原として十分な機能を果たしているとは言えないが,管理依存の生物が生息する環境であり,半自然草原が減少していることから,ワラビ園のような希少生物が生息できるような環境を維持することは重要であることを明らかにした。また,それと反対に哺乳類群集については,ワラビ草地の草原生態系としての機能が限定的であることを明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果に基づき,新たに形成された草原生態系,特に閉鎖スキー場,観光ワラビ園に着目して,その生態学的特性を明らかにすることで,それら草原景観における森林再生過程のより普遍的な傾向と,豪多雪地帯における生物多様性の保全を意識した景観管理の技術について検討を行う。とりわけ,森林再生課程においては,過去の研究成果との比較から生物群集の変化を時系列に配列して,その変化を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度は,現地調査を他の調査地の調査に同行するかたちで実施したため現地調査旅費が限定的となったことと,本格的なデータ整理・とりまとめを次年度に送ったことにより,旅費と謝金・人件費の支出が当初計画より減額となった。 次年度調査では当初計画に加え,森林再生課程においては,過去に調査を実施した調査地の再調査を実施することにより生物群集の変化を時系列に配列して,その変化を明らかにするための調査,及びデータ整理を実施することで,昨年度からの繰り越しを有効に利用する。
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