2013 Fiscal Year Research-status Report
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25550091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
伊藤 敏幸 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50193503)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イオン液体 / アミノ酸イオン液体 / リグニン / 選択的溶解 / 再析出 / バイオマス / 再生可能資源 |
Research Abstract |
植物体はセルロースやヘミセルロースと,芳香族環をもつフェニルプロパノイドの3次元網目構造体であるリグニンが絡み合って構成されており,その3成分であるセルロース,ヘミセルロース,リグニンを各々の構造を損なわず分離することができればバイオマス資源のさらなる有効利用が可能になると期待される. 申請者はセルロース溶解性を示す新しいイオン液体([N221ME][Ala])を開発し((特許出願2011-001483;ChemSusChem., 2012, 5, 388),この結果を基盤にリグニンを選択的に溶解できるイオン液体をデザインを検討した.カチオンとアミノ酸の組み合わせを種々検討した結果,60℃で15wt%, 100℃で55wt%のリグニンを溶解するイオン液体[P1ME][Lys]を見いだした.このイオン液体はセルロースも溶解するが80℃以上の温度が必要であり,リグニンとの溶解性に大きな違いがある.そこで,木材粉末に[P1ME][Lys]を加えて60℃で12時間攪拌後に遠心分離してイオン液体溶液と未溶解部分を分離し,イオン液体溶液をエタノールあるいは水で希釈するとリグニンが析出し,リグニンを抽出することができた.イオン液体未溶解区分を水で洗浄すると,部分的にナノファイバー化したセルロースが回収され,その結晶構造はI型を保持していた.硫酸やフェノールなどの劇物が不要,高温・高圧の水も大規模な処理装置も不要,しかも,セルロースを犠牲にしない省エネルギーリグニン抽出が実現したことになる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究で目標としたリグニンを選択的に溶解できるイオン液体の開発に成功した.ただし,リグニンを溶解したイオン液体がゲル状になるために処理スケールをあげるとイオン液体可溶部分と非可溶部を分離するのが難しいという問題点が生じた.また,サンプルの含水率を十分に減らさないとリグニンの溶解性が低下するという問題点があきらかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
さらにイオン液体のデザインをブラッシュアップしたい.特に,水分含量が多い場合もリグニンを溶解できるイオン液体のデザインを検討する.さらに,バイオマスの3成分分離の方法論について,初年度は先にリグニンをイオン液体に溶解させ,セルロースを残す方法を調べたが,本年度はまずセルロースとヘミセルロースを選択的に溶解してリグニンを残す方法論を検討したい.この目的のため,サンプル中の水分含量が多い場合でもセルロースとヘミセルロースを溶解できるイオン液体のデザインに取り組む.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本学のものづくり研究センターとの共同で進めていた保温装置付きのイオン液体溶液濾過装置の設計に時間がかかり,本格的な大量処理ができなかったため,結果的にイオン液体合成のための試薬代など消耗費が余ったため. 1)本年度にバイオマスのイオン液体溶解液の保温濾過装置が完成するため,この装置の費用を支払う. 2)木質バイオマスからのリグニンの抽出に取り組むためのイオン液体の大量合成を行う.
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Research Products
(21 results)