2013 Fiscal Year Research-status Report
地域の文脈を意識させる農漁村環境づくりのための合意形成に関する研究
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25550099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木谷 忍 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20169866)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ロールプレイ / 地域文脈 / ゲーミング / 合意形成 |
Research Abstract |
25年度は、地域農村のもつアイデンティティへの気づきを意識させるための中国の一小都市でのゲーミング実験の結果、山形県の中山間地農村での農業者のライフストーリー調査にもとづくゲーム作成の結果、および青森県三沢市での漁業についての役割演技型の合意形成実験の結果について、それぞれ住民の意識形成の観点から分析し3本の論文として学会誌等に投稿し掲載された。中国の実験では、若者(高校生)が伝統工芸の職人を演じることでクラスメイトの地域文化の重要性意識が高まること、ライフストーリー調査では、農業者の生活への共感が増すこと、漁業資源の活用による合意形成実験では、演じる人と演じられる人の間でのやりとりの楽しさを通じてお互いの理解が深まったことが確認された。 地域づくりのための合意形成手法として地域文脈を意識させるひとつの方法として、地域物語を通して情報共有させる方法を考えた。ここでは、ナラティブアプローチによる接近を試み、語りのボランティアによる読み聞かせの効果を調査した。それによれば、読み聞かせは、地域物語の持つ地域情報を確実に伝えるという効果よりも、地域住民への共感を促す効果の方が大きいことが学生実験による予備調査で確認でき、この結果は国際学会で報告した。これに関連して、地域づくりにいける地域計画の表現方法について、数値目標に代表される形式的な表現が説得力をもつことも学生実験により確認されている(国内学会で報告)。 合意形成のための別の方法として、グループによるゲーム作成(農業ゲームの作成)の効果も調べた。ゲームの作成は扱うゲームの題材によって教育効果が期待されるが、ここでは農業の技術的側面よりも、農業を中心とした地域環境づくりへの啓蒙効果(意識改革)への期待ができる結果となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、合意形成実験のためのゲーミングシステム設計のための基本的な条件を探ることが目的であり、現場に出向いてさまざまな調査を実施し情報収集を行った。これらは予備的な実験としての位置づけであり、地域文脈への気づきについての評価対象者は主に大学生としている。この意味においておおむね順調に研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度の計画では、25年度で得た知見を生かして役割体験をもとにしたゲーミング実験を設計し、地元住民を交えた評価システムの構築を図る。地域農村・漁村を持続可能なものにするには、外部社会との経済交流だけではうまく行かない。地域の文脈を世代間で継承していくしくみづくりへの地域住民の気づきと合意が同時に必要である。 25年度の研究成果をもとに、2つの学生グループをつくり、それぞれ地域経済活性化の観点、地域の伝統文化の維持保全の観点から、対象地域のフィールド調査と住民インタビューからから農漁村づくり計画の策定を行わせる。そこでは学生からのさまざまなアイデアを出してもらい、行政・農業(漁業)従事者、一般住民の役割を意識しながら、行政の役割を演じる学生に問いかけながら、グループの地域づくりプランの作成を行わせる。2グループのプランは、相互に情報交換することなく、実際の住民の前でプレゼンテーションを行わせる。学生の作成したプランはそれぞれ合理的ではありうけれども、そして地域経済活性の観点によるグループのプランがより説得力を持つことが期待されるけれども、住民の中にはその中に違和感をもつことも出てくると考えている。それは、学生たちがその地域の慣習やアイデンティティ意識の欠如にもとづいていると考える。 以上の方向性で、合意形成ゲーミングの設計を行い、その有効性を確かめることが26年度の研究課題となる。この有効性は、27年度に実施予定の自然環境や産業構造の異なるいくつかの実験を通して実証されることを期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が32万円強になっているのは、2014年3月中旬のスペインでの国際シンポジウムでの報告のための旅費が26年4月に支出されたためで、実際に25年度の研究活動で未使用となった金額はわずか3.3万円程度である。この金額は基金制度を活用して無駄な支出を避けるほうがよいと判断し、実質的な次年度の使用額とした。 26年度の旅費、まはた謝金として使用する。
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Research Products
(8 results)