2015 Fiscal Year Research-status Report
地域の文脈を意識させる農漁村環境づくりのための合意形成に関する研究
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25550099
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木谷 忍 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20169866)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ブランド化 / ロールプレイ / 受容感 / 合意形成 / 地域アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
宮城県東松島市のブランド化活動において、地元産品の直売所での観光客と地元民とのやりとりを2つの仮想的な環境の中でロールプレイとして実現し、観光客側の受容感(地元に受け入れらる感覚)の違い、および東松島への好感度について検討した。環境設定では、従来どおりの地元産品の歴史や商品の味、品質などブランド化に期する情報を、地元民に扮して客に伝えるもの、もう一つは、客とのやりとりを楽しむ会話づくり、すなわち商品情報だけでなく個人的な話を加えながら演技する。得られた成果として、観光客の受容感は後者のほうが高く、東松島を訪れたいという気持ちが高まること、一方でCVMによる地元産品の貨幣評価では有意な差異がなかった。商品のブランド化という点に焦点をあてる場合、観光客の受容感に注目することは効果的でないといえるが、ブランド品の地元に足を運んでもらうことを考えれば、商品方法だけではなく地元民と観光客との間の個人的なやりとりも長期的には重要であると考えられる。 別の調査研究として、大津波で被災した南三陸沿岸の農漁村に計画されている防潮堤建設についての住民の合意形成の問題を取り上げた。防潮堤建設は、住民の意見を尊重しながら政府主導で実施しているものであるが、地元住民の考えは一様ではなく極めて複雑な気持ちの上で揺らいでいる。防潮堤建設の是非は大津波体験の有無とか直接関係せず、また何が何でも人命優先というのではなく地域のアイデンティティの確保が前提という被災民もいる。多様な4人の被災民による体験話と防潮堤建設意識を、それぞれのグループの学生たちに聞かせた後、学生同士で防潮堤建設にあたって最も考慮すべきことを話し合ってもらった。得られた結果として、防災重視よりも合意形成重視、限られた時間の中で防潮堤建設を決定するのではなく、すべての住民が納得できるまで時間を十分にかけることの重要性意識が高まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
この補助事業は前年度に終了予定であったが、前年度最初に襲った病気(遅発性内リンパ水腫)のため補助事業を進めることができなくなり、前年度後半より研究を再開したものの事業終了できない見通しとなったため、一年間の期間延長を承認いただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
予備実験としての学生実験ではなく地元住民を対象としたゲーミング実験まで実施できなかった。今後早急に、地元住民に地域づくりプランを提案し、地域資源への気づきを促すゲーミング実験の計画を策定し、評価分析を行う予定。 具体的には、農漁村の地域づくりプランをつくるための現地での地域資源調査、農業、漁業、加工業者等へのインタビュー、ゲーミング実験の手順(設計)と実施を通して、 その結果を評価する。
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Causes of Carryover |
前年度前半が病気のため、計画通りの予算執行ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
延長申請を承認していただくことができたので、28年度の事業としてフィールド調査および住民を交えた実験調査を行う予定である。
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Research Products
(7 results)