2013 Fiscal Year Research-status Report
オーストラリアにおけるランドケアと持続可能な地域発展に関する制度分析
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25550108
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篭橋 一輝 南山大学, 社会倫理研究所, 研究員 (60645927)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ランドケア / オーストラリア / 地域コミュニティ / 持続可能性 / コモンズ |
Research Abstract |
平成25年度は、オーストラリアのブーマヌーマナのランドケア・グループを対象とした聞き取り調査と、ヴィクトリア州におけるランドケア活動の歴史と現状に関する現地調査を実施した。 ブーマヌーマナでは、地下水面の上昇に伴って1980年代に深刻化した塩害問題を抜本的に解決するために、1989年からランドケアのネットワークに参加し、塩害と干ばつに強い農業の実現が目指された。塩害被害の深刻な場所や農場のフェンスや道路、あるいはマルウェーラ用水路に沿った植林の実施と、“Old Man Salt Bush”と呼ばれる塩分吸収性の高い植物の植樹によって、地下水の塩水化が回避・軽減された。また、干ばつに関しては農業用水の再利用システムを導入するなどして水利用を効率化するとともに、渇水に強いマメ科のアルファルファを植え、干ばつ時の営農リスクを低減している。 ヴィクトリア州での聞き取り調査では、州都メルボルンおよび近郊の都市(ペンズハースト、レオンガタ、ベンディゴ等)においてランドケア活動に携わる人々を訪ね、ランドケアの特質に関する以下の重要な知見を得た。①ランドケア・グループやネットワークの活動の活発さと自律性は、設立時に関わった主体と経緯に影響を受ける。②ランドケアの本質は、人々の関係をつなぎとめる場を提供する点にあり、問題解決のツールという役割を超えたものとして人々に認識されている。③オーストラリアのランドケアのアプローチを日本に導入する際には、オーストラリアと日本のコミュニティ文化の違いを明確に認識しなければならない。 以上の現地調査を通じて、ランドケア活動を持続的かつ効果的に進める上では、グループ内でリーダーシップを発揮する人材と、他のグループとのネットワークの形成を促進する人材の存在が決定的に重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査を綿密に行い、オーストラリアにおけるランドケアの現状と特質を明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ランドケア活動の持続可能性を決定づける要因(グループ内でリーダーシップを発揮する人材およびグループ間のネットワーキングを促進する人材の存在)の検証と、ランドケアと地域発展の関係性を分析するための枠組みについての考察を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ランドケアの海外研究者を招聘して合同研究会を開催する予定であったが、合同研究会の講師の招へい費用が研究代表者の所属機関の予算から支出されることとなったため、次年度使用額が発生した。 ランドケアに関する文献・資料等の物品費、オーストラリアの海外調査の旅費、研究協力者への謝金等に使用する。
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