2013 Fiscal Year Research-status Report
人間-環境系のイノベーションのためのデザイン思考に関する記号学的研究
Project/Area Number |
25560004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
門内 輝行 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90114686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守山 基樹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70534303)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 人間-環境系のデザイン / イノベーション / 対話によるデザイン / デザイン思考 / デザインプロセス / 探究 / アブダクション / デザイン手法 |
Research Abstract |
本研究では、「人間-環境系のイノベーション」を可能にするデザイン方法、特に「デザイン思考」に焦点を結び、記号論の視点からその仕組みを解明するとともに、それを支援するデザイン手法を提案することを目的として、①「デザイン概念」の質的転換の把握、②「デザイン問題」の定式化、③イノベーションを促す「デザイン思考」における「探究のプロセス」の把握、④デザイン思考の核心にある「アブダクション」の仕組みの解明、⑤デザイン思考(特にアブダクション)を支援する手法の提案、⑥プロジェクトの実践によるデザイン思考の理論と手法の検証を行う。 本年度は、まず、デザインの概念を、単体としての人工物をつくることから、人工物相互の関係や人工物と人間・環境との関係をデザインする営みへと拡張し、デザイン問題をうまく定義できない「意地悪な問題」とみなすことにより、新しいデザイン方法論の地平を明らかにした(①~②)。その上で、アメリカの哲学者C.S.パースの記号論に基づいて、デザインプロセスをアブダクション-演繹-帰納からなる「探究」のプロセスとして把握し、創発的なプロセスにおけるアブダクションの仕組みの分析を進めた(③~④)。 こうした理論的な研究とともに、小学校の図書室(ブックワールド)について、総合学習の時間を使って、6年生の児童全員(93人)とともにデザイン(リノベーション)するという画期的な取組を行い、1/10の巨大模型や実物大のモックアップなどを用いたワークショップを行い、実施設計・施工を経て実現にこぎつけるというアクション・リサーチを展開した。このプロジェクトによって、メタファーやアブダクションを含む創発的なデザイン思考や対話によるコラボレーションという人間-環境系のイノベーションのためのデザインプロセスを解明する貴重なデータが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
人間-環境系のイノベーションのためのデザイン思考に関する理論的解明を進めるだけでなく、当初は予定していなかったプロジェクト(京都市立洛央小学校のブックワールドのデザイン)を6年生児童93人とともに実践するという機会に恵まれ、メタファーやアブダクションを含む創発的デザイン思考、コラボレーションによるデザインという創発的なデザインプロセスをアクション・リサーチとして展開することができ、研究を推進する上で貴重なデータが得られたことから、当初の計画以上に研究が進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
人間-環境系のイノベーションのためのデザイン思考について、記号論的視点からの理論的解明をふまえて、デザイン思考(特にアブダクション)を支援する手法を体系的に整理するとともに、新たなデザイン手法を提案する。 これに並行して、本年度実施した小学校のブックワールドのデザインプロジェクトについて、その創発的なデザインプロセスの分析や実際の使用プロセスの調査分析を行い、デザイン理論の深化・拡大を図るとともに、創発的なデザイン思考の仕組みを解明し、多くの人々の対話によるデザインを支援するデザイン手法の構築を推進する。
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Research Products
(22 results)