2013 Fiscal Year Research-status Report
高品質な米粉パン製造に最適な高ストレス耐性野生酵母の獲得と製パン技術開発
Project/Area Number |
25560032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
永井 毅 山形大学, 農学部, 教授 (10385502)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 野生酵母 / 採取 / 分離 / 選抜 |
Research Abstract |
現代の日本人の食生活は、米より小麦(パンや麺)を食する傾向が年々強くなっている。実際に1人あたりの米の年間消費量は昭和37年(1962年)の半分程度まで減少し、2011年現在57.8kgまで低下した。近年、日本の食料自給率(カロリーベース)は39%前後を推移し低迷しており、2020年の50%まで上昇させるとする国の目標値には到底及ばないのが現状である。食料の半分以上を諸外国からの輸入に依存しているわが国で、主食用米の自給率はほぼ100%と高い値を示しており、数少ない自給可能な食材のひとつである。食料自給率上昇の面からも、米の消費量を上げることが緊急の課題である。平成21年7月「米穀の新用途への利用の促進に関する法律」が施行されたことを受けて、米粉用米の生産量は増加しており、米粉の利用拡大が進んでいる。現代の食生活で最も消費の期待されるパンへの取り組みも進んでいるが、小麦粉と異なりグルテンを形成しないなどの性質から、問題点も多い。本研究の目的は「高品質な米粉パン製造に最適な高ストレス耐性野生酵母の獲得と製パン技術開発」を目指すことにある。 本年度の目標は、果樹王国としての地の利を生かした有用野生酵母の採取、分離、選抜の試みである。その成果として、(1)果樹果実(オウトウ、セイヨウナシ、カキ、ブドウ、リンゴ)より260株の菌株を純粋分離した。形態、顕微鏡観察などにより、オウトウとブドウから酵母の単離に成功した。(2)発酵力の高い株の取得を目指し、2-デオキシ-D-グルコースを用いたスクリーニングにより、31耐性株を獲得した。(3)気泡発生試験による1次スクリーニングにより、特にオウトウ(佐藤錦および南陽)から発酵力が顕著に高い株を獲得した。以上より、果樹果実から獲得した菌株の中には、米粉パン製造に適した野生酵母の存在の可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、「野生酵母の採取、分離、選抜、マルトース資化株の獲得ならびに1次スクリーニングによる酵母の分離」である。 結果として、数種果樹のなかでも、特にオウトウ(佐藤錦および南陽)から顕著に発酵力の高い株の取得に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに取得したデータに基づき、次年度は以下の2点の研究計画を発展させ、遂行することにより、本研究の目的を達成することを目指す。 (1)選抜酵母の2次スクリーニング「①糖類によるエタノール生成量の影響の検討、②冷凍・乾燥耐性試験、③生育適温ならびに形態的特徴観察、④生地膨張力試験の実施」 これらの試験において良好な結果が得られた株を、最適糖質源を用いて大量培養し、酵母を確保する。 (2)製パン試験(3次スクリーニング)「①米粉粒子の影響の検討、②直捏法による製パン試験の実施」 上記試験と並行して、発酵力の高い新たな野生酵母の更なる獲得を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に引き続き、高ストレス耐性野生酵母の培養やスクリーニング、顕微鏡観察、分析を進めるとともに、製パン試験を実施するにあたり、関連試薬、ガラス器具、プラスチック器具や原料米などが必要となる。さらに、本年度の結果を踏まえて、学会発表や論文出版など、新たな知見を公表する予定である。 選抜酵母のスクリーニングおよび製パン試験を実施するため、実験試薬や実験器具などを順次購入する。一方、発酵力の高い新たな野生酵母の更なる獲得を目指すため、酵母培養も行う。
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