2014 Fiscal Year Research-status Report
高品質な米粉パン製造に最適な高ストレス耐性野生酵母の獲得と製パン技術開発
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25560032
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
永井 毅 山形大学, 農学部, 教授 (10385502)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 野生酵母 / 選抜 / スクリーニング / 製パン性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究では、果樹王国山形県の地の利を生かして、果樹果実(オウトウ、セイヨウナシ、カキ、ブドウ、リンゴ)より有用野生酵母の採取、分離、選抜を試み、オウトウとブドウから発酵力の高い酵母の単離に成功した。しかしながら、これら以外にも有用酵母の可能性が示唆されたため、さらにスクリーニングを行い、炭酸ガス発生力の優れた酵母を得た。また、エタノール生成力試験により選抜した結果、セイヨウナシ(ラ・フランスおよびレッド・バートレット)ならびにリンゴ(紅玉およびリチャードデリシャス)より7株を得た。これらについて、各種糖質(スクロース、グルコース、フルクトース、マルトース)添加酵母培養液による生育適温試験を行うと同時に、日本イースト工業界パン用酵母試験法を改変し、無糖、低糖、高糖生地を用いた生地膨張力試験を実施した。その結果、マルトースではエタノール生成量が少なく、生成に時間を要したが、それ以外の糖質では良好であった。特にグルコースを糖質源とした場合顕著であった。また、生育適温は30℃であった。一方、生地膨張力試験から、選抜酵母は低糖生地への活用は期待されるが、無糖および高糖生地では製パンは困難であると考えられた。これらの結果よりさらに2株「ラ・フランス(以下①)およびレッド・バートレット(同②)由来」まで選抜し、予備試験的に小麦粉生地での製パン試験を行った。比較として、市販ドライイーストを用いた。その結果、焼成パンの皮はともに厚く硬かった。①のクラムはキメが細かく不均一であるが、②では気泡膜が大きく粗かった。水分含量はドライイーストのそれと比較し両者とも高かった。また、②やドライイーストのパンの膨化率や比容積は①より顕著に高く、焼減率は②>ドライイースト>①の順であった。一方、焼成後の破断強度は、①>②>ドライイーストであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究において選抜された野生酵母は少なかったため、さらにスクリーニングを実施し、新たに高品質な米粉パン製造の可能性が期待される酵母の採取、分離ならびに選抜に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、2次スクリーニングにより2株「ラ・フランス(以下①)およびレッド・バートレット(同②)由来」まで選抜し、研究を進めた。しかしながら、炭酸ガス発生力試験やエタノール生成力試験ではこれら以外に有用酵母5株を得ている。さらに詳細な研究を進めることで、高品質な米粉パン製造に最適な野生酵母を見出し、主要米から調製した米粉による製パン技術開発に繋げたい。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き、本学圃場で栽培される果樹果実から野生酵母のスクリーニングを行った結果、有用な2株を得たが、今後可能性のある残り5株についても米粉パン製造に適する株であるか詳細に調査する必要がある。その結果として、予定していた実験項目の実施に対する次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記を踏まえて、3次スクリーニングとして設定した製パン試験を実施する。自動ホームベーカリーを用いた直捏法により、作付面積の大きい代表的な品種米の米粉を用いて、製パン試験を実施する。また、試験により最適化された条件を踏まえて、米粉パン製造用酵母の工業利用を目指す。
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