2013 Fiscal Year Research-status Report
分岐鎖アミノ酸代謝シグナル制御による機能性大豆の作出
Project/Area Number |
25560038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
湯淺 高志 宮崎大学, 農学部, 教授 (40312269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 眞理 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60091394)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ダイズ / アミノ酸 / 分岐鎖アミノ酸 / 糖シグナル / 転写因子 / オートファジー / bZIP型転写因子 / ゲノム |
Research Abstract |
我々のグループは糖飢餓条件に応答してマメ科作物ササゲ芽生えでオートファジー活性化に伴いオートファジー関連遺伝子(ATG8)やプロリン脱水素酵素(ProDH),分岐鎖アミノ酸(BCAA)アミノ基転移酵素(BCAT)が誘導されることを報告した(Kaneko et al. 2013).そこでダイズの栄養飢餓シグナルに応答したオートファジー誘導とアミノ酸転流関連遺伝子の発現調節関係に着目した.我々の先行研究からスクロース飢餓とタンパク質分解酵素を組み合わせた処理でオートファジー活性化とGmATG8iの発現が誘導されることを報告した(Nang et al. 2009, Okuda et al. 2011).栄養飢餓ストレス処理に応答したオートファジー活性化に伴って,GmATG8iタンパク質の脂質修飾を示す泳動度増加が観察された.またオートファジー誘導に際してダイズ芽生えのBCAA特異的アミノ基転移酵素(GmBCAT)とプロリン脱水素酵素(GmProDH)を顕著に発現誘導することが示された.次に,GmBCATとGmProDH遺伝子の上流プロモーターのcisエレメントに結合する可能性がある二つのbZIP型転写因子ダイズオルソログに注目した.栄養飢餓処理に応答してそれらbZIP転写因子の片方のみが顕著に発現誘導された.さらにbZIP転写因子を特異的に認識するペプチド抗体を作成して,bZIP転写因子のタンパク質レベルを解析したところ.スクロース飢餓とタンパク質分解酵素阻害剤を組み合わせた処理ではbZIP転写因子のmRNA・タンパク質レベルが共に増加した一方,スクロース飢餓処理ではmRNAレベルが増加したが,タンパク質レベルに変動は見られなかった.このことより栄養飢餓応答性bZIP転写因子は栄養飢餓ストレス処理の違いにより転写レベル・タンパク質レベルで複雑な調節を受けることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイズのアミノ酸栄養代謝に関わる分岐鎖アミノ酸(BCAA)の合成代謝をになうBCAAアミノ基転移酵素(BCAT)をダイズゲノム情報から初めて同定し、その器官特異的発現と発生段階における発現プロファイルを明らかにした.さらにBCAT酵素を特異的に認識する抗ペプチド抗体を作成し、ダイズおよびマメ科植物での内在性BCATタンパク質レベルを検出することに成功した。さらにBCATやプロロン脱水素酵素(ProDH)、アスパラギン合成酵素(ANS)の遺伝子発現をマスター調節するbZIP転写因子を発見して、ショ糖液飢餓がオートファジーを誘導した際の、分解産物のアミノ酸の転流において、bZIP転写因子を介してBCAT,ProDH,ANSの発現調節を促進することを明らかにした。このようにしてBCATおよびその他のアミノ酸代謝の調節機構に関わる転写因子の発見とオートファジー調節の結びつきを解明した点において大きく研究が進展しており、今後の展開も期待できるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ダイズBCAT候補遺伝子のGFPやGST融合タンパク質の導入発現実験により生化学的諸性質を解析する.BCATのRNAiノックダウン株を作出する.さらに、並行して佐賀大学農学部の穴井豊昭博士の研究グループと共同してBCAT遺伝子変異体をTILLING法 で選抜する.またBCAAによるTOR-LIPIN経路による油脂合成制御を解析するためBCAT-KOダイズの油脂合成関連遺伝子の発現をダイズ66K DNAアレイを用いて解析する.また閉鎖系温室でGMダイズ栽培実験を進める. TILLING選抜ダイズの遺伝子発現プロファイルと代謝物変動をDNAアレイ, LC-MS解析を行う.高発現するGMダイズのT1個体の選抜を進め,閉鎖系温室のGMダイズと圃場のTILLING選抜ダイズの収量構成要素など栽培関連のデータを集積し,特に子実のBCAAを含む代謝物変動をLC-MSによる評価する.
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