2014 Fiscal Year Research-status Report
伝統的食用油の特性を生かした新規健康志向型食用油の創成に関する研究
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25560044
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
池本 敦 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (60295615)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アケビ / 食用油 / 1,2-ジアシルグリセロ-3-アセテート / アセチル化油脂 / ジアシルグリセロアセチルトランスファラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
トリアシルグリセロールを主成分とする食用油脂と比較して、体脂肪がつきにくく肥満予防に有効な1,2-ジアシルグリセロ-3-アセテート(DAGA)を主成分とするアケビ種子油は秋田な伝統的食用油である。しかし、原材料の不足による製造の困難さのため、復活には至っていない。これを克服するため、本研究では、アケビ種子油と同等の特性を持った新規油脂を開発することを目的としている。 昨年度までの研究で、アケビ種子酵素を利用した1,2-DAGAの製造に成功し(酵素製造法)、ジアシルグリセロール(DG)のアセチル化反応による1,3-DAGAと1,2-DAGAの混合油の製造法を確立した(化学合成法)。本年度は、酵素製造法による大量製造を目指して、酵素遺伝子のcDNAクローニングを検討した。酵素活性が最大になる時期の種子からmRNAを抽出してcDNAライブラリーを作成し、そこから目的遺伝子のスクリーニング法を確立した。現在、クローニングのためのスクリーニング作業を遂行している。 また、昨年度化学合成法により大量製造法を確立した新規アセチル化油脂(1,3-DAGAと1,2-DAGAの混合油)について、マウスを用いた動物実験を行ない、安全性と有効性を検証した。新規油脂は肝臓障害などの有害性を示すことなく、各種生化学的指標からも安全性が高いことが確認された。また、通常の食用油であるトリアシルグリセロール油や体脂肪がつきにくいとされるジアシルグリセロール油と比較しても、新規アセチル化油脂の方が体脂肪がつきにくく、肥満予防に有効であることを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究で達成した酵素製造法の確立に引き続いて、大量製造を目指してバイオテクノロジー的手法を使用するために、酵素のcDNAの活用に向けて、必要な実験を進展させることができた。この方法を用いれば、より安全性の高い油脂を開発することができる。 また、化学合成法により大量製造法を確立した新規アセチル化油脂についても、マウスを用いた動物実験により、安全性と有効性を確認することができ、順調に研究を進展させることができた。これまで最も有用とされてきたジアシルグリセロール油と比較しても、新規アセチル化油脂の方が体脂肪がつきにくく、肥満予防に有効であることを示すことができ、研究が発展する可能性を見出すことができた。 以上のように3ヵ年で計画している本研究課題の2年目として、おおむね順調に研究をすすめることができ、一部予想以上の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を踏まえて、以下の研究を遂行して行く。 ① 製造した新規アセチル化油脂のさらなる有効性の検証: DAGA分子種を分析する手法を用いて、各種臓器・組織におけるDAGAの存在とその代謝産物の有無を検証する。また、新規アセチル化油脂が肥満・メタボリック症候群及び糖尿病予防に有効かどうかを解析する。その際、疾病の指標となる各種遺伝子の発現をRealtime-PCR法によって解析する。 ② 膵リパーゼを用いたDAGAの基質としての消化酵素分解特性の解析: 作成した新規アセチル化油脂について、膵リパーゼを用いて加水分解特性を解析する。Lineweaver-Burkプロットを行ってMichaelis-Mentenの式で近似し、酵素と各種基質との親和性を比較する。また、胆汁酸等の界面活性剤の影響を評価する。 ③ 培養腸管由来細胞をいた新規アセチル化油脂の消化吸収過程の解析: ヒト結腸由来のCaco-2細胞を用いて、新規アセチル化油脂の細胞への取り込み及びその後の細胞内での代謝の過程を解析する。細胞内での代謝産物や関連分子の発現を測定することで、DAGA各種分子の代謝特性を解析する。 ④ 新規アセチル化油脂の調理・加工特性の評価: 製造した新規アセチル化油脂を様々な食品の調理・加工に活用し、官能評価等により食用油としての調理特性を解析し、食生活における活用法を検討する。具体的には、揚げ物や炒めもののような普段の食生活で植物油を多く使用する料理や、ドレッシングやマヨネーズなどのような調味料への活用法を検証する。以上の検証を総合して、開発した油脂が味覚的にも健康機能的にも生活者ニーズに適合したも食用油となるように創意・工夫する。
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