2015 Fiscal Year Annual Research Report
ビタミンC生合成不全は思春期における不安症及び鬱病の発症リスク因子か
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25560047
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松田 美和子 (小泉美和子) 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (30373301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 恵美子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (80154524)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ビタミンC / 不安症 / うつ病 / 成育環境 / ストレス脆弱性 / セロトニン神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間が生得的にビタミンCを生合成できない生物学的特性を再現するためGNL/SMP30ノックアウトマウスを用い、ビタミンC欠乏が不安症および鬱病の誘発リスクとなる可能性を検討した。不安症および鬱病が増加する原因として社会的環境に着目した。仲間構成が常に同じ社会的環境安定群と仲間構成が入れ替わる不安定群とを比較し、成育環境によるストレス感受性と性差を検討した。 思春期に入ってすぐの時期(4~5週齢)から社会的環境安定群と不安定群に分け、ビタミンC充足条件で1か月飼育した後、不安様行動とうつ様行動を判定した。社会的環境安定群は新規ストレッサーに対する感受性が有意に高く雄で顕著だった。ビタミンC枯渇条件に切り替え1か月飼育すると不安様行動とうつ様行動は雌雄両方で悪化した。摂食行動を指標とする不安様行動、強制水泳を用いた行動試験後の摂食抑制は雌で顕著であった。 ビタミンC枯渇条件によって、ビタミンCは血中から消失し、血中グルタチオン濃度は社会的不安定群が有意に低値だった。血中コルチコステロンは社会的環境の違いがなかった。脳内ビタミンC濃度はビタミンC充足期に比べて約100分の1に低下した。酸化ストレス指標を中脳で測定したところ全マウスで著しく高かった。海馬および前頭皮質のセロトニンならびにドーパミン濃度は、海馬セロトニンのみ社会的環境による違いを認めた。 以上の結果から、人間がビタミンCを生合成できない生得的特性が心の病のリスク因子であること、さらに思春期以降の社会的成育環境がストレス感受性に与える影響は男女で明確に異なることがわかった。血中および脳内の酸化ストレス亢進、情動調節に関わる海馬領域におけるセロトニン神経障害の関与がわかった。ビタミンC欠乏を引き起こしやすい条件(成育環境・性別・年齢・食習慣・生活習慣など)の具体的検討が、精神疾患の予防および治療に貢献できる可能性を見出した。
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