2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25560060
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
井上 正康 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, その他 (80040278)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 素子 宮城大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30250301)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 原子力発電所 / 放射能汚染 / セシウム / 生物濃縮機構 / フィチン酸 / 酸性多糖体 / 体内被曝 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年の東日本大震災による福島原子力発電所の事故に伴う放射性物質の汚染は、被災地での実害や風評被害も含めて全国的に深刻な問題となっている。特に農産物や海産物への放射性物質汚染は大きな不安要因となっており、その実態を解析してリスクを回避する方法の開発が緊急の課題である。本研究は、①日本人の主食である米および常食される農産物や海産物への放射性セシウム(Cs)の移行濃縮機構を明らかにすると同時に、②食物中Csの体内蓄積を抑制する方法を確立することを目的として行われた。 本研究により、大きな原子量とイオン半径を有するセシウムが強いファンデルワールス力と正荷電により玄米のフィチン酸やキノコ類の酸性多糖体などの負荷電分子群と結合しやすいことが土壌から移行して蓄積されるメカニズムの一因である可能性が示唆された。事実、玄米ではCsの大半フィチン酸の局在する胚芽に濃縮分布していた。これらの結合特性から、セシウムと結合し易いポリアニオン性多糖体を有する昆布などを多く摂取することにより経口摂取されたセシウムの消化管内吸収の抑制と排泄の促進が可能であることが示唆された。 土壌の粘土層に結合したセシウムは安定な特異的錯体構造を有するので、これが土壌に長期間留まるメカニズムであるが、その結合を安定な状態に維持しておくことが農作物への意向を最小限に止める方策につながることが示唆された。宮城県を中心とするキノコ類への放射性セシウムの蓄積は2011年度に顕著であったが、翌年以降は測定限界以下の値となり検出出来なかった。これらの結果は、セシウムと土壌中粘土層との結合が短期間に強化され、農作物へ移行しにくくなる可能性を示唆する。
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