2014 Fiscal Year Research-status Report
理科授業におけるメタ認知能力育成を意図したパフォーマンス評価の導入
Project/Area Number |
25560080
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
中城 満 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 講師 (80610956)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | パフォーマンス評価 / 科学リテラシー / メタ認知能力 / 理科教育 / 問題解決学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度は、パフォーマンステスト・モデル作成を主な目的として実施された研究授業とその分析による実践研究をおこなった。これらを基盤として、平成26年度にはパフォーマンス評価導入のための条件についての明確化に取り組んだ。また、これらの知見をもとにして、理科カリキュラムにおける他の単元におけるパフォーマンス課題例の設定に取り組んだ。 平成25年度における研究を通して,パフォーマンス評価の授業導入に当たっての条件として,以下の2点が明らかとなった。①既習の学習内容を含んでいるが,児童が体験していない実験や観察をパフォーマンステストとして学習活動に導入すること。②設定されるパフォーマンステストは,問題解決の過程を段階的に児童自身が体験することができる内容であること。以上の2点である。 平成26年度においては、これらの研究成果を,国際理科教育学会(ASERA2014)、第62回日本理科教育学会全国大会(2014),科学教育研究(Vol.38 No1)等において発表した。これらの発表等を通じて、平成25年度の研究成果を広く発信することができた。また、この発表での質疑においても多くの改善点が見出された。具体的には、実験や観察におけるパフォーマンスのみならず、児童が得た概念を「言葉として説明する」というパフォーマンスが児童の科学概念獲得のために大変効果的であるということが指摘された。また、これらの手法が、児童自身の理解状況の自覚というメタ認知的能力の育成にも効果的であるという点が明らかにされた。さらに、各種研究会や科学館等での資料収集をもとにして、他単元におけるパフォーマンス課題例の設定をおこなった。これにより、小学校第5学年、第6学年における物理領域でのパフォーマンス課題例を設定することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては、平成25年度において構築されたパフォーマンス評価モデルの内容について学会等で発信をおこなった。これにより、より明確なパフォーマンス評価設定の条件が明確になった。これに基づき、理科における他の単元でのパフォーマンス評価の実践を蓄積した。 具体的な単元名としては、第4学年「空気と水の性質」「ものの体積と温度」、「電気の働き」、「水・水蒸気、氷」、第5学年「ふりこのはたらき」、「動物のたんじょう」第6学年「ものの燃え方」、「水溶液の性質」である。当初の予定では、小学校については全単元を、中学校についても物理領域をその具体的課題設定の対象としていた。しかし、前述のように、小学校における粒子、エネルギー領域に限られており、生命領域については1単元のみとなっている。 パフォーマンス評価の実践蓄積については、一定の成果はあったものの、全ての領域、単元にまでその対象を広げられていないことが課題である。一方、これらの結果は、パフォーマンス評価導入の限界、またはこれらの評価手法導入の適性が関連しているのかもしれない。これらの点についても、明らかにしていく必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後については,得られた実践事例だけでなく、他の単元についても引き続き蓄積したいと考えている。特にこれまで対象とすることができなかった「生命」「地球」の領域、中学校理科における単元などの実践事例を蓄積したい。最終的には小中学校の理科全単元のパフォーマンス評価実例集の完成をめざしたい。さらに、パフォーマンス評価の手法がメタ認知能力育成に果たす効果についても、蓄積してきた授業データを分析することを通して明らかにしたい。 以上の研究にあっては、学校現場の教員の協力による具体的な授業実践記録の蓄積が欠かせないが、徐々にこれらの協力体制も充実しつつある。これまでは、主に、研究代表者が所属する高知大学の附属小中学校に依頼する場合、研究協力者である数名の公立学校教員に依頼する場合などがその主なものであった。しかし、昨年度からCST(理科中核教員養成プログラム)関連の研究授業、認定されたCSTによる研究授業実施、等による授業記録実施の機会が格段に増加した。このことにより、研究授業記録の蓄積が充実した。これらの状況はこれからも継続できる見通しである。以上のような環境を十分活用し、本課題研究の最終年度としての役割を果たしたいと考えている。 研究成果の発信については、パフォーマンス評価事例集の編集、海外、国内での学会等における発表を予定している。
|