2013 Fiscal Year Research-status Report
次世代の理科・化学教育を視野に入れた分子論的な実験教材の開発
Project/Area Number |
25560081
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
小杉 健太郎 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (70380376)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 化学教材開発 / 分子論的アプローチ |
Research Abstract |
中学校・高等学校と大学の教育内容の連続性・親和性を将来的に向上させることを視野に入れて、中学校・高等学校の理科教育おける「エネルギー」・「粒子」概念と大学学部レベルの物理化学教育における分子論的な化学現象の見方を有機的に接続させた実験教材を開発することが本研究の目的である。高等学校等でも製作可能な安価な簡易実験装置を用いて透過光強度の時間変化を計測し、そのデータの解析と考察に基づいて化学反応速度論的な内容を学習させる教材の開発に最初に着手した。まず、研究協力者の学生とともに実験・解析を行い、題材として選択した反応の活性化エネルギーの値を十分な精度で得ることができた。簡易実験装置は室温で測定できるところまでは完成しており、現在は試料温度を制御可能な試料セルホルダーの設計を行っている。一方で、新旧学習指導要領のもとでの高等学校化学の教科書における化学反応速度論的内容について調査・分類を行うとともに、学部・大学院レベルのテキストの内容との橋渡しとなるような教材内容を検討した。 このような化学反応速度に関する教材開発と並行して、化学平衡についての教材開発も開始した。現在、教材として適切な実験条件を決定するために、塩化コバルトと溶媒である2成分溶液の濃度比を変化させ、283 Kから353 Kの間で可視スペクトルを測定している。前述の簡易実験装置を用いて実験するためには、溶媒を変更する等して、さらに適切な実験条件を探す必要があると考えている。この化学平衡に関する実験を量子化学計算と結びつける教材については未着手であり、次年度に行うことにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点では、簡易実験装置は室温での透過光強度の測定を行えるものの、温度制御機能を実装するところまでは到達できていない。しかし、現在設計中の試料セルホルダーが完成すれば装置は完成するため、装置開発についての遅れは僅かであると考えている。一方、教材内容については、化学反応速度に関する部分は具体的な内容についても固まってきているが、化学平衡に関する部分についてはかなり遅れている。実験条件の調査は進行しているものの、量子化学計算については未着手であり、全体の教材の構成についても検討できていない。これらのことを総合して、現在までの達成度を「やや遅れている」と自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
化学平衡に関する教材の実験条件を決定するための測定を継続する一方で、試料セルホルダーの設計を遅くとも5月末までに済ませて製作を発注する。これが完成するまで、化学平衡の題材として選択した系について量子化学計算を実行し、これを取り入れた教材化が可能かを検討する。これについては、短期的に成果が得られそうになければ優先度を下げて、まずは実験教材の完成に注力していくべきと考えている。試料セルホルダーが完成した後は、簡易実験装置を用いて測定を行い、そのデータに基づいた高校生・大学生1~2年生向けの化学反応速度、及び、化学平衡の教材を完成させる。また、大学生向けにはクライオスタットを用いた実験を構成し、これと簡易装置を用いるものとを比較して双方の利点を検討する。年度の後半には、教材を用いた実践を行い、受講者の分子論的な理解度の向上や、教材の問題点や課題についても調査する。また、平成26年度の計画に含んでいる溶解熱に関する教材については、量子化学計算による結果と文献値を比較し、既存の簡易装置を用いる実験教材の教育効果を向上させられるような改善を行う。
|