2015 Fiscal Year Research-status Report
「幸せ」を目指す技術者倫理-科学的知見に基づく技術者倫理原則の検討-
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25560088
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
札野 順 東京工業大学, 大学マネジメントセンター, 教授 (90229089)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 工学教育 / 技術者倫理 / ポジティブ心理学 / 主観的幸福度 / Good Work |
Outline of Annual Research Achievements |
なぜ、技術者は倫理的であらねばならないのか。なぜ、技術者は特別の責任を負うのか。この問いに対して、伝統的な責任論や義務論を越えて、心理学的根拠に基づいた「新」功利主義的(技術者個人の「幸せ」と公衆の「幸せ」を最大にする)な解を提供することが本研究の目的である。開発者であるMargaret Kern氏の許可を得て、金沢工大(KIT)心理科学研究所(所長:塩谷亨)と共同で日本語化したPERMA Profiler(個人のWell-being度測定尺度)に、独自の質問とSWLS(人生に対する満足度尺度)を加えたPERMA Profiler KIT版を金沢工大での授業で実施した。1回目を5月に、2回目を6月に同じクラスで実施して、1)倫理のポジティブな側面(aspirational ethics)を強調した科目を履修した学生が4週間でどのように変わったか、2)この学生群のうち、一部の希望者には、一週間に3つ以上「よい仕事(Good Work)」を見つける作業をしてもらい、作業をした学生としない学生との変化の違いを比較した。PERMA ProfilerおよびSWLSで、2回目の数値が向上し、かつ、Meaningと SWLSトータルで、統計的に有意な差があった。この結果を6月にフロリダで開催された国際ポジティブ心理学学会で発表した。また平成28年2月に金沢工大にMargalet Kern氏を招へいして、教職員30名対象のポジティブ・エデュケーション講習を1週間行うに際し、コーディネーターを務めるとともに、講習に参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者が平成27年9月に金沢工業大学から東京工業大学に移籍したため、研究室の移動をはじめ、移籍に伴う諸業務のため、数ヶ月間、通常の研究活動ができなかった。また、東京工業大学に移籍後も、平成28年度から開始する、まったく新しい教育システムの構築に予想以上にエフォートが必要であったため、研究計画に遅れが生じた。このため当初平成27年度までだった研究期間を平成28年まで延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
Well-beingと倫理の関係、およびGood Workなどを強調する「志向倫理」型の技術者倫理科目を開発する。また、この科目を受講することで、受講者の主観的Well-beingがいかに変化するかを、日本語版PERMA Profilerなどを用いて測定する。 当初予定していたGood Workを成し遂げた技術者に対するインタビューをPERMAモデルを使って実施する。 平成28年7月に米国ダラスで開催されるIPEN(国際ポジティブ教育ネットワーク)に参加し、ポジティブ教育を実践している教育者らと情報収集、意見交換する。また、PERMA Profilerの活用方法などに関して、M. Kern氏と意見交換するとともに、同氏が持つポジティブ教育に関する情報の提供を受ける。
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Causes of Carryover |
進捗状況に述べたように、研究代表者が平成27年9月に金沢工業大学から東京工業大学に移籍したため、数ヶ月間研究に注力することができなかった。また、東京工業大学に移籍後も、平成28年度から開始する、まったく新しい教育システムの構築に予想以上にエフォートが必要であったため、研究計画に遅れが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年7月に米国ダラスで開催される国際ポジティブ教育ネットワーク(International Positive Education Network:IPEN)の国際大会に参加し、関係者と情報収集・意見交換を行うとともに、M. Kern博士らと面談し、同氏が所属するメルボルン大学ポジティブ心理学センター(南半球最大のポジティブ心理学の研究拠点)の情報を活用する予定であり、補助金残額のほとんどをこの旅費にあてる。
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