2013 Fiscal Year Research-status Report
幼児期から児童期にかけての対象操作とイメージとの関連性
Project/Area Number |
25560119
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Edogawa University |
Principal Investigator |
野田 満 江戸川大学, 社会学部, 教授 (00636300)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | メンタルローテーション / 手操作 / 身体性 / 加速度センサー / イメージ / 幼児 / 姿勢 / ひきうつし |
Research Abstract |
子どもがモノをどう扱うかという問題がある。それまでの先行研究で、対象の空間位置において、対象を自分にあわせる場合と自らを対象にあわせる場合が見出されてきた。本研究では身体を用いてイメージの補助的な役割を果たそうとする「ひきうつし」(野田,2001,2008,2009,Noda,2012)という現象が、より一般的な出来事であるのかを調べるために身体の変化のあり方に焦点をあて、その数量化をはかるための研究として計画された。この研究の目指すところは「理解とは何か」というテーマの一端を明らかにすることであり、まだ充分に発達していない子どもの対象認識の方法として、視覚だけでなく対象へかかわる行為が重要な役割を果たすものと考えられた。この対象へかかわる行為を数量化し明らかにすることを目的とした。 実際には認知課題を与え、対象を手で探索し操作しようとする際に生じる、子どもの身体の変化を捉えることにある。実際の手続きでは、対象を手で探索し操作しようとする際に、対象に合せようとして生じる頭部の傾き・手の振れの2点から身体の変化を捉えようとした。メンタルローテーションを認知課題として用いた。加速度計はATR社の小型無線多機能センサー(TSND121)を頭部後方と左手首に装着するかたちで使用した。加速度と角速度の両方が求められたが、加速度の振れ幅を身体的変化とみなした。メンタルローテーション課題では練習と本検査(2種類の刺激条件を用意)からなるが、左に標準刺激、右に比較刺激を呈示し異同を反応ボタンにより求めた。比較刺激は0,45,90,135,180度の傾きがランダムに呈示されるかたちをとった。また、子どもの自己制御との関連性が想定されたことから、「自己制御能力尺度」(大内・長尾・櫻井,2008)も実施した。 尚、本実験は江戸川大学における研究倫理審査で問題がなかったことを付記する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、加速度計として某社の機材を検討していたが、センサーデータを送る方法が有線であったので、無線によるデータ送信が可能なATR社のTSND121を用いることで、参加する子どもの負担を軽減するように試みた。これにより有線でセンサーを動かすのとは異なり、より自然な姿での身体変化を捉えることに成功した。これにより当初の計画で課題とされていた以下の3点が解決、達成された。1)手や姿勢の安定した反応が得られ、データ送信の線による動きの制限が解消された。2)身体への装着位置は頭部後方により、身体、特に頭部の傾きの空間位置変化を検出することが出来、右手で反応させ左手首にセンサーを装着することで、左手での補足的な動きを捉えることが出来た。更に3)センサーデータのキャリブレーションだけでなく、3歳から6歳までの幼児期の子ども61名の加速度データ、動きを伴う動画データ、メンタルローテーションによる反応時間データ、誤反応データ、自己制御能力のデータを得ることが出来た。 昨年度残された課題として2点ある。1)比較的難易度の高い幼児における課題状況やキャリブレーション検討と実際のデータを得ることを25年度は検討したので、直ちに未取得の大学生のデータを、同様の実験手続を試行することで得ることも本年度は予定している。幼児との統制群として考えている。2)左手首につけることで、本来課題を解く際に生じる「ひきうつし」それ自体を加速度センサーで数値化できなかった点がある。しかし、反応する右手側にセンサーを装着すると、きわめて情報量が過多となり漠然としたデータとなる恐れが考えられた。よって、実験手続の検討が必要である。しかし、左手が右手を補足するような動きが観察された。反応の度に周期的に生じる左側の手の動きの意味は大きいと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度に実施した実験データの統計的処理を行なうのと同時に、大学生に対し同様の手続きによりデータを入手する予定である。これにより3歳児、4歳児、5歳児、大学生の実際の発達変化の動向が検討可能になると考えている。当初の計画で立てた仮説はメンタルローテーション課題での誤答率が低い子どもは、加速度の揺れつまり身体的動きが反映する値は小さく、一方、誤答率の高い子どもは加速度の揺れが反映する値は大きくなると考えられた。この仮説の検証を年齢別に進めていく予定である。 更に、自己制御能力がメンタルローテーション能力と高い関係にあるという結果を得ているので(野田・落合,2013)、加速度による揺れとの関係を検討していく予定である。加速度による揺れ幅が注意の集中の程度を表す自己制御の一側面と関連する可能性が高く、注意の集中が出来ている子どもは、メンタルローテーションで要請されるイメージの変換を内的な領域で行っていると推測できるが、実際に身体を動かし対象へ能動的にかかわろうとする子どもの場合は、イメージが充分に内化しておらず、刺激の多くの参照点に繰り返し注意を向ける可能性から、加速度の揺れ幅が大きくなることが予想される。イメージの内化過程で身体が果たす役割は重要であるが、身体の揺れが内化の側面あるいは程度を反映するのではないかという考えを検証することを考えている。 上記の成果の一部を国内外の学会で発表する予定である。まず2014年度の日本イメージ心理学会のシンポジム「イメージと身体性」で発表する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年における欧州発達心理学会(ECDP)で発表を行ったが、旅費の精算を科研費開始年度以前の時期である2013年3月に行ってしまい大部分を請求することが出来なかったことが原因のひとつである。また人件費については個別検査であったので、多くの要員を必要としない状況であったために支出が制限されたといえる。 手の動きが観察されたことから、映像データから手の動きをトラッキングするための画像処理ソフトを導入することを検討している。また、TSND 121を2機追加購入することで、時間制約がある中での迅速なデータサンプリングを検討している。
|
Research Products
(5 results)