2013 Fiscal Year Research-status Report
裸眼3D視線一致型TV会議システムを利用した遠隔教育の効果と身体的負荷の研究
Project/Area Number |
25560122
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Okazaki Women's University |
Principal Investigator |
谷田貝 雅典 岡崎女子大学, 子ども教育学部, 准教授 (70469485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永岡 慶三 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (90127382)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遠隔教育 / 遠隔学習 / テレビ会議システム / 裸眼3D / 視線一致 / 学習効果測定 / 多変量解析 / アイトラッキング解析 |
Research Abstract |
半世紀前、3Dによる遠隔コミュニケーションは、SFに登場する未来の空想上の通信であった。本研究では、これまでの2D視線一致型テレビ会議システムによる遠隔教育に関する研究成果をふまえ、「撮られる意識の軽減」「視線一致環境」「ゲイズアウェアネス環境」「空間認知環境」の実現をめざし、「裸眼3D視線一致型テレビ会議システム」を完成させた。 また、開発した裸眼3D視線一致型テレビ会議システムを利用し、大学間における遠隔交流学習を行った。なお、比較のために現在流通している視線が合わない2D視線不一致型システムと、これまで研究を重ねてきた2D視線一致型システムによる遠隔交流学習も実施し、同一条件で、効果測定を行った。遠隔交流学習の効果測定は、交流中のアイトラッキング測定(被験学習者客観データの取得)と事後質問紙調査(被験学習者主観データの取得)を実施し、得られたデータを分析した結果、以下のことが分かった。3D視線一致型は、動作伝達に優れ「ゲイズアウェアネス環境」「空間認知環境」の成立が認められたが、予測通り「疲労・違和感」が高く長時間の利用には向かないことが初めて分かった。2D視線一致型は3D視線一致型に比べ「ゲイズアウェアネス環境」「空間認知環境」に劣るが、「疲労・違和感」が低く「意欲・理解感」の向上に優れ、常用や長時間の利用を想定した遠隔学習環境に適していることが新たに分かった。現在流通している2D視線不一致型は、上記の2つの環境に比べ、学習対象への注視率が低く、まともに目視すべき目標をとらえることができず「疲労・違和感」「不満感」が高い値となるなど学習環境として劣っており、「撮られる意識の軽減」「視線一致環境」「ゲイズアウェアネス環境」「空間認知環境」の成立には至らないことが、これまでの研究結果と同様に追認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は、①システム開発、②性能基礎研究、③身体負荷評価、④教育効果、⑤身体的負荷と教育効果の集成、の5段階からなる。このうち①の達成と、②④の部分的な成果を得ており、これらはすでに成果を公開済みである。特に④に関しては、次年度(H26)に開始する計画であったが、本年度中に先行して実施した結果、良好な成果を得られた。なお、③に関しては、成果を公開するには至っていない。よって、上記区分の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、立体映像による双方向通信を実現し、かつてSFで語られていた未来の教育環境を具現化する試みである。他方、SFで語られていた時代には想像もできなかった、高い「疲労・違和感」や「3D酔い」(動揺病)などが懸念される。特に「3D酔い」に関しては「3次元映像に関するガイドライン試案」(機械システム振興協会)や「3DC安全ガイドライン」(3Dコンソーシアム)などで、適切な提案がなされているが、いずれも、市販されている眼鏡型3D映像を中心としたもので、本研究で採用した裸眼3D(レンチキュラー型)については未解明な部分が多い。また、本研究では3D映像を凝視する映画の視聴やビデオゲーム時など比較的受動的な場合とは用途が違う。双方向遠隔コミュニケーションでは、画面に注視する場合と、画面外の情報(例えば手元のメモなど)へ目を向けることもある。また、発言や発表時などは、能動的に映像空間に働きかけ、時に極度の緊張を伴う場合もある。こうした行動が「3D酔い」を発症するのか、または新たな症状などをどう発症するのかは、未解明であり、このような潜在的な負の側面は開発者が同時に研究する必要があると考える。よって、今後、医学的見地からも研究し、予想される各症状の有無や、個人差などを事前に弁別する問診票の完成と、視線が一致する3D遠隔教育環境における適正な利用ガイドラインの策定などを行い、裸眼3D視線一致型テレビ会議システムを利用した身体的負荷と教育効果の処方箋をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究遂行のために、3Dモニタの価格と台数を抑えた。 次年度研究遂行のために、10-20法脳波計購入(またはレンタル)の費用に充てる。
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