2015 Fiscal Year Research-status Report
世界のトップに躍り出たカナダの脳神経倫理学を通して科学技術ガバナンスを考察する
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25560126
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐倉 統 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (00251752)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳神経倫理 / 科学技術ガバナンス / 科学技術政策 / 質的研究 / 科学と政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去3年間の、カナダでの実地調査の結果を踏まえ、比較対象として韓国の脳神経倫理(脳神経科学と社会との関係全般)についてのデータ収集をおこなった。韓国を選んだ理由は、文化的背景が日本と共通する東アジアの国であることと、近年、脳神経科学を中心とした学際プロジェクトを盛んに推進しているからである。なお、当初予定していたカナダの生命科学ガバナンスの大元であるカナダ保健衛生科学研究機構 (CIHR) へのインタビュー調査は、再三にわたる照会にもかかわらず回答がなく、実現しなかった。 韓国についてはソウル国立大学と光州科学技術院の研究者たちと研究プロジェクトに従事している学生・PDたちを中心に聞き取り調査をおこない、また、関連文献を収集した。体系的な分析はまだ途上であるが、カナダや日本に比べると学術界への政治的トップダウンの影響力が大きく、最先端のテーマや領域に積極的に取り組んでおり、研究推進体制も学際的で斬新なものが組みやすい状況にあるようだった。一方で、短期間でくるくると政府の方針が変ることもあり、そのたびに大学や研究組織が振り回され、腰を落ち着けて長期的スパンで地道な研究を蓄積していくことが困難であるという面も観察された。 これらの情報を総合して、日本の制度や社会風土、文化的背景、財政状況などを考慮しつつ、日本に適した科学技術のガバナンス・システムを考察する必要があるが、その作業は今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カナダ保健衛生研究機関 (CIHR) への聞き取り調査を実現することができず、カナダでの情報収集が研究者側からの情報にとどまった。韓国での調査も期間が短く、十分に多方面からの情報を収集はできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2つの方向を考えている。ひとつは、カナダの科学技術政策、とくに生命科学や脳神経科学のガバナンスについて、さらに調査を継続すること。2015年に政権交代があり、科学技術や研究に関する連邦政府の方針も大きく変更した。その影響を測定する必要がある。もうひとつは、カナダおよび韓国における今までの調査でえられた情報を総合して、日本の制度や社会風土、文化的背景、財政状況などを考慮しつつ、日本に適した科学技術のガバナンス・システムを考察することである。国の規模や研究を取り巻く環境が大きくことなるため、他国の制度がそのまま日本に適用できるわけではない。どの特性は移植可能であり、どれはそうではないのか、検討する作業をおこなう。
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Causes of Carryover |
研究代表者が部局長に選出されたため、校務多忙となり、予定どおりに計画を遂行することが困難であった。 カナダの科学技術政策については、政権交代があったので方針が大きく変り、前政権の状況に焦点をあてていた計画の見直しが必要となった。 比較対象の韓国については、インフォーマントとして予定していた研究者3名のうち2名がサバティカル休暇で外国に滞在しており、情報収集を計画どおり進めることが困難であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
過去3年間の実地調査で収集したデータを集計分析するための補助者への謝金に使用する。 総合的考察に必要な文献の購入に充てる。
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