2013 Fiscal Year Research-status Report
遺跡に記録された地震・洪水の痕跡を磁化から探る研究
Project/Area Number |
25560135
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
酒井 英男 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (30134993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀川 恵司 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (40467858)
川崎 一雄 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 助教 (60624806)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 噴砂 / 地磁気年代 |
Research Abstract |
平成25年度は,最初に遺跡の土壌の磁化から地震・洪水跡の記録を読みとる方法と装置を整備した.磁化研究では,帯磁・ヒステリシス実験機器と超伝導磁力計を整備し,また環境物性では,洪水堆積物の化学分析機器の資料部の改良を行った.研究は富山県・新潟県の遺跡で検出された地震災害跡を中心に行った. 地震液状化による噴砂が検出された遺跡の一つである富山県高岡市の遺跡では,竪穴住居跡の貼床を貫いて広範囲で噴砂が認められ,上位に焼土が重なっていた.焼土は,元は竪穴式住居の屋根に葺かれていた土であったが,磁化研究から,焼土は2世紀,噴砂はほぼ同時代か若干古いとの年代が求まり,層位と矛盾は無かった.得られた焼失と地震の年代および考古学の調査結果を併せると,地震に伴う住居の破損・液状化により居住が困難となって建物は廃絶され,そしてしばらくして人為的に火災を起こしたと考えられた. 全国的に多数の焼失竪穴住居が見つかっており,多くは失火では無く人為的火災が原因と考えられている.ただ火災の理由と過程については,住居焼失実験も含めて多くの研究が行われているが,不明の点が多い.本研究では,以前に発掘された富山市の竪穴式焼失住居の焼土の磁化も再検討し,高岡市の焼失竪穴式住居と同様,土屋根は高温で床に落下し地磁気方向に磁化していたことを確認した.これらの結果は,従来説であった“焼失後も屋根や屋根土は残っていて冷却後に取り壊された”との可能性は低いことを示し新たな知見となった.研究結果は論文で公表した. 富山市の遺跡の竪穴焼失住居では噴砂は認められていないものの,遺跡内で噴砂が検出されており,同様に地震被害と失火との関係の検討が必要になっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の遺跡発掘で,過去の地震(液状化,変形)と洪水の痕跡が検出された複数の遺構において関係機関の協力により,多くの研究試料を入手できた.一部の試料の磁化研究を終えて研究業績・概要で示した成果が得られた.研究方法の有用性を確認し,新規実験法も立ち上げつつあり,研究は順調に伸展している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に発掘が計画されている遺跡(自然災害跡が示唆される)での研究を予定しており,採取試料と本年度に得た試料と併せて,磁化調査と化学分析を行う.噴砂の磁化獲得の室内実験も計画している.洪水堆積物の研究では河川での探査と河床掘削を併せた研究による試料も入手できる予定である.本年度の研究から,遺跡の地震(被害)跡では火災の影響も調査する必要性が示された.遺物への熱影響は目視ではわからない場合も多く,磁化調査を加えて新たな研究の展開を行う.
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Research Products
(4 results)